10月 天空の浄土と最古の祈り

天空の浄土を巡り、
県内最古の御仏を訪う旅。

2024年10月某日

 爽やかな秋風に誘われ、旅心をくすぐられるこの季節。この機会に以前からやってみたかった月山のトレッキングに挑戦してみようかとおもう。天空を満喫したあとは、県内最古を裏テーマに巡ってみたい。

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14弥陀池湿原★DSC09846.JPG19シルクミライ館★DSC09914.JPG51貸切露天★DSC00397_edited-1.jpg
20いさごや★DSC00892.JPG23いさごや★DSC00755_edited-1.jpg☆タテ.jpg
55庄内空港緩衝緑地★DSC01739.JPG71本明寺★DSC01044.JPG75吉祥寺★DSC01068.JPG77勝地の大杉★DSC01087.JPG



標高1400mの別天地。
草紅葉の弥陀ヶ原を周遊する。

 海抜1984mの月山は、出羽三山の主峰でもある信仰の山だ。今なお修験道の修行場としての顔を持つ一方、トレッキングスポットとして、初級から上級まで様々なコースが用意されている。
 
 今回は、八合目の「弥陀ヶ原」を約60分で周遊する初級コースに挑戦する。月山八合目までは車で登ることができるが、細い山道をくねくねと走るだけでもなかなかのスリル。 

01弥陀池湿原★DSC09866.JPG03弥陀池湿原★DSC00017.JPG
02弥陀池湿原★DSC00007.JPG78弥陀池湿原★DSC09769.JPG12弥陀池湿原★DSC09815_edited-1.jpg
 およそ40分ほどかけて登ったところで八合目駐車場に到着。標高1400mから見晴らす山々の風景なかなかのもの。

 この一帯にながらかに広がるのが「弥陀ヶ原」と呼ばれる湿原だ。木道に沿って巡るコースとなる。草紅葉の草原の中に大小様々の池(「池塘(ちとう)」)が点在する光景はなんとも言えず美しい。

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07弥陀池湿原★DSC00028.JPG08弥陀池湿原★DSC00026.JPG
 15分ほど歩くと月山御田原参籠所(中ノ宮)に行き着く。小さなお社の傍らには狛犬ならぬ狛兎が鎮座。鳥居の奥には山頂にある本宮に続く道があるが、これはまた別のコースとなる。

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13弥陀池湿原★DSC00115.JPG11弥陀池湿原★DSC00104.JPG14弥陀池湿原★DSC09846.JPG
 トレッキングのシーズンは7月〜10月。シーズン中は鶴岡駅から路線バスも出ている。

■月山八合目 弥陀ヶ原(がっさんはちごうめ みだがはら)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町川代
●駐車場/あり(月山八号目駐車場)
●営業期間/
 ・月山公園線(四合目~八合目)開通期間:例年6月下旬~10月下旬
 ・開山祭:例年7月1日
 ・月山神社本宮 開山期間:2024年7月1日(月)~9月15日(日)
 ※天候等の状況により変わる場合があります
●問合せ/羽黒町観光協会 0235-62-4727
●URL/羽黒町観光協会-月山弥陀ヶ原湿原



未来につなぐサムライシルクの心。
シルクミライ館。

 下山して宿に向かう途中、シルクミライ館に立ち寄る。ここは、以前訪れた国指定史「跡松ヶ岡開墾場(松ヶ岡クラフトパーク)」内の四番蚕室にあたる。鶴岡・庄内地域の絹産業の歴史を体感しながら学べる絹織物体験施設として2022年にリニューアルオープンした。

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 1Fにはシルク産業の歴史や、蚕を育てて繭から絹糸に、さらにそれを織り上げた絹織物を染め上げる工程までを紹介する展示コーナー。織り機を使って自分でコースター織ってみることができる体験コーナー。鶴岡の絹産業を映像で学ぶシアターがある。

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 2Fの研修室では市内⾼校⽣によるシルク関連の研究結果を紹介するほか、市内の織物⽂化に関する展⽰も。また、葉酸室も併設されており、実際に養蚕棚での蚕飼育も行われ、日々の成長の様子を見ることができる。

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 ショップコーナーも充実しており、洋服から小物まで現代の日常生活にさりげなく用いたい製品もずらり。

■シルクミライ館(松ヶ岡開墾場四番蚕室)(まつがおかかいこんじょう4ばんさんしつ)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町松ヶ岡25
●駐車場/あり
●休館日/水曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12/29〜1/3)
●入館時間/9:00~16:00
●入館料/無料
●問合せ/0235-33-8424(シルクミライ館)
●URL/MATSUGAOKA CRAFT PARK公式サイト シルクミライ館



大きな窓辺で満喫する秋空の日本海。
いさごやで堪能する器の上の秋模様。

 定宿となっている「いさごや」だが、宿泊のたびに新鮮に感じるのは嬉しい驚きだ。今回は8階のエクセレントフロアーにある「凪」を利用させていだだいた。

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25いさごや★DSC00303.JPG23いさごや★DSC00755_edited-1.jpg24いさごや★DSC00297.JPG
 ベッド付きの和洋室、窓がより大きくとられていてロケーションがいっそう際立つ。以前にも利用させていただいたがやはり良い。ミラー付きのデスクなど、女性には嬉しい仕様がさりげなく、

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☆ヨコ.jpg31ラウンジ★DSC00227.JPG30ラウンジ★DSC00157.JPG

 本日の夕食は本日は料亭の一室にて。お献立の銘は「神無月 秋深まりゆく」.器の上の秋模様は一目瞭然かと。見事。お供の地酒は「加藤嘉八酒造」のt区別純米酒「大山 十水(おおやま とみず)」。
 
 山形県のブランド米「はえぬき」を使用。日本酒度−6,5〜7.5、酸度1.7と、数字の上ではかなりの甘口・濃厚だが、くちあたりはまろやか。くどさなどはあったくなく飲みやすく、どんなお料理にもあう感じだ。

32夕食会場★DSC00577.JPG33夕食★DSC00596.JPG34夕食★DSC00618.JPG
36夕食★DSC00602.JPG35夕食★DSC00627.JPG37夕食★DSC00635.JPG38夕食★DSC00645.JPG
 米沢牛の握り、サラダには米沢牛のシンタマの味噌漬け、米沢牛ロースの石焼と、なにげに米沢牛三昧。ごはんは庄内産はえぬきの新米。味噌汁がわりの芋煮は、庄内風の味噌仕立て。

39夕食★DSC00673.JPG40夕食★DSC00694.JPG41夕食★DSC00706.JPG
 デザートは月山ワインマリネにシャインマスカットとナガノパープル・ラフランスのジェラートと最後まで山形らしさにこだわったメニューを堪能した。

27貸切露天★DSC00548_edited-1.jpg42夜ラ★DSC00889_edited-1.jpg43夜ラ★DSC00717_edited-1.jpg
 ナイトタイムはプライベートスパで夜風を楽しんだ後にラウンジへ。庭園のライトアップが幻想的。

*ハイプライベートスパ『漣-REN』
 スタンダードプラン 3,000円(税別)
 プレミアムプラン    5,000円(税別)(バスローブ・シャンパン付)
 各45分 チェックイン後順次予約受付

45大浴場露天★DSC00907.JPG46大浴場★DSC00931_edited-2.jpg
 翌朝は大浴場「月水湯」に。滝見檜風呂・露天檜樽風呂・露天岩風呂をはしご。ちなみに時間帯によって日本海を一望する「吟水湯」とは男女入れ替えがあrので、両方入りたい場合は事前に要チェック。

50朝食★DSC00860.JPG47朝食★DSC00839.JPG50朝食★DSC00857.JPG
48朝食★DSC00812.JPG49朝食★DSC00804.JPG44★DSC01705.JPG
 朝のお食事会場はレストラン「茶寮月岡」。大きな窓から日本海が一望。爽やか!メニューは「神無月の朝」。ほっとする定番とッ分の季節感のほどよい調和。朝のごはんは庄内産つやひめの新米。夜と朝で違ったブランド米が食べられるのもちょっとした贅沢。

52部屋から★DSC01698_edited-1.jpg54サーフィン発祥の像★DSC01725.JPG
 ところで、湯野浜海岸がサーフィン発祥の地だということをご存知だろうか?宿のすぐ近くに「波乗り発祥の地」の碑文と図があるので、ぜひ一見してほしい。

■游水亭 いさごや(ゆうすいてい いさごや
●住所/山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
●泉質/ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含塩化土類食塩泉)
●駐車場/あり
●問合せ/0235-75-2211
●URL/いさごや公式



秋空に赤く染まるぼんぼりコキア。
庄内空港緩衝緑地のプロジェクト。

 ぼんぼりのように丸く可愛らしい姿のコキアは秋になると茎まで真っ赤に紅葉する。庄内空港緩衝緑地のコキアの紅葉が秋の風物詩になっていると聞いて行ってみることに。緑地内のオートキャンプ場入り口に植えられたコキアはおよそ1000株。なかなかに壮観だ。

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 一年草のコキアは別名ホウキギ、またはホウキグサともいい、ホウキの材料になる。実際にほうきつくり体験のイベントも行われているそうだ。紅葉の終わったコキアを乾燥させて利用する。毎年の植樹には、地元の保育園児やボランティアも参加しているとか。

57庄内空港緩衝緑地★DSC00955.JPG56庄内空港緩衝緑地★DSC00963.JPG58庄内空港緩衝緑地★DSC00937.JPG
 この庄内空港緩衝緑地は、庄内空港一帯を囲む緑地帯で、スポーツゾーン、キャンプゾーン、ヒーリングゾーンを含んだ多目的公園として整備・管理されている。飛行機の離着陸を間近に見られるということもあり、家族連れにもおすすめだ。

■庄内空港緩衝緑地(しょうないくうこうかんしょうりょくち)
●住所/山形県酒田市浜中粮畑306-7
●駐車場/あり
●運営者/庄内園芸緑化株式会社(指定管理者)
●問合せ/0234-92-4570(庄内夕日の丘オートキャンプ場)
     0234-92-4427 (庄内空港緩衝緑地パークセンター事務所)
●URL/ 庄内空港緩衝緑地 庄内夕日の丘オートキャンプ場
    コキアガーデンプロジェクト 



極上温泉とクセになる魅惑のラーメン。
やまぶし温泉 ゆぽか。

 次の目的地に向かう屠龍、「山伏ラーメン」の文字に惹かれて、日帰り温泉施設「温泉やまぶし温泉 ゆぽか」に。

 大きく綺麗な施設で、大浴場や露天風呂のほか、ゆっくり過ごせる個室も充実。そこでレストランメニューもオーダーできるとのこと。家族風呂付きの貸切個室もあるともことなので、そちらを利用することに。

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 思いのほか豊富なメニューからチョイスしたのはもちろん「山伏ラーメン」(800円)。白濁したスープで濃厚系なのかと思いきや、臭みのない醤油ベースでまろやかなコクがありながら意外とあっさり。美味。人気でリピーターも多いらしいのも納得。

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61ゆぽか★DSC00989.JPG62ゆぽか★DSC01775.JPG64ゆぽかb★DSC00992.jpg
 お部屋のお風呂は小さいながら蛇口から温泉がが出る仕様。無足透明で舐めてみるとほんのり苦い。湯上がり後もぽかぽかと温まるよいお湯であった。

■やまぶし温泉 ゆぽか(やまぶしおんせん ゆぽか)
●住所/鶴岡市羽黒町後田字谷地田188
●駐車場/あり
●休館日/毎月第3木曜日
●利用時間/入浴 6:00~22:00(最終受付 21:20)
      食堂<昼食>11:00~14:30
        <夕食>金・土・日・祝/17:00~20:30(ラストオーダー20:00)
●利用料/入浴 大人450円、小学生220円
    個室(2時間・入浴料別)1,200円〜
    風呂付和室(2時間・入浴料別)1,600円
●泉質/ナトリウム・カルシウム塩化物泉
●問合せ/0235-62-4855
●URL/https://yupoka01.securesite.jp ( やまぶし温泉 ゆぽか 公式



県内最古の即身仏がおわす不動山本明寺。
本明海上人の御心が今もなお世を照らす。

 庄内地方には6躯の即身仏が現存してるが、もっとも古いのが「不動山 本明寺」に安置さている「本明海上人」だ。そんなわけで、ここには一度訪れてみたかった。

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 不動山本明寺は文禄元年(1592年)心月上人によって創建された。戦国時代の兵火により焼失したが、本明海上人が再興。庄内藩2代藩主の酒井忠当の眼病を治したことから酒井藩から庇護さるようになる、

 本明海上人は延宝元年(1673年)に千日の五穀断をはじめ、天和3年(1683年)61歳で本明寺境内で土中入定。遺言により3年3ヵ月後に掘り起こすと即身仏になっていたと伝わる。

67本明寺★DSC01012.JPG69本明寺★DSC01036.JPG
71本明寺★DSC01044.JPG72本明寺★DSC01055.JPG73本明寺★DSC01803.JPG
 厳かな雰囲気の杉林の奥に入定の跡が今も残されている。本堂に安置されいる上人お御には思わず手を合わせたくなるなんともいえない静謐さがあった。

 上人のお召し物は定期的に交換されるが、その衣を使ったお守り袋も置かれている。境内には不敵に行われる火渡りの残り木も。

■不動山 本明寺(ふどうさん ほんみょうじ)
●住所/山形県鶴岡市東岩本字内野388
●駐車場/あり
●拝観料/無料 ※事前に電話予約
●問合せ/0235-53-2269
●URL/不動山 本明寺 公式



吉祥天女が舞い降り護法神となる。
庄内三十三観音32番札所の太白山吉祥寺。

 本明寺から「太白山 吉祥寺」までは車でおよそ15分。庄内三十三観音の第32番札所となっている曹洞宗のお寺だ。正平元年(1346)の創建とされ、曹洞宗としては圏内で一番古いのだとか。

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 拝観には事前予約が必要なため、今回は境内のみの拝見となる、吉祥寺の名の由来は、吉祥天女がこの地に姿を現し護法神となることを開祖の徹山旨廓禅師に告げたことによるとか。こじんまりとしながらも、明るく軽やかな心地よさが感じられた。

■太白山 吉祥寺(たいはくざん きちじょうじ)
●住所/山形県鶴岡市東岩本字内野388
●駐車場/あり
●拝観時間/9:00〜16:00 ※事前に申し込み必要
●問合せ/0235-57-2712
●URL/山形県公式観光サイト



ただ一本残された天然の古木。
樹齢400年の勝治の大杉。

 今回最後に訪れたのは、「勝地の大杉」と呼ばれている杉の巨木だ。樹齢400年、幹回り7.1m。市の天然記念物に指定されている。まだ若く細い木が周りを囲む杉木立ちの中、ひっそりと佇んでいる。

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 以前は他にもこのような天然杉が自生していたそうだが伐採され、いつしかこの木だけが残されたらしい。長い時をこの地で過ごしてきた杉の長老様に敬意をはらい、どうぞいつまでもお元気でと祈りながら帰路に着いた。

■勝地の大杉(かっちのおおすぎ)
●住所/鶴岡市板井川字勝地
●駐車場/なし
●拝観時間/9:00〜16:00 ※事前に申し込み実用
●問合せ/0235-57-5670(鶴岡市教育委員会)
●URL/庄内ロケ地データベース

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posted by 庄内あるく at 00:00日記

3月 庄内の建築美とグルメ探訪

鶴岡レトロと酒田モダンの建築三昧。
庄内浜グルメとソウルフードを味わう旅。
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2024年3月某日

 春とは名ばかりでまだまだ冬の気配が残る三月半ば。以前、鶴岡公園を中心とした擬洋風のレトロ建物を巡ったが、中心地以外にも、かつて西田川郡、東田川郡と呼ばれていた鶴岡の郡制時代の名残の建物が点在する。

 かたや酒田には現代木造建築の粋を集めた建物があるという。今回は、新旧の建物巡りと酒田のソウルフード、オランダせんべいの工場を見学、そして庄内浜、酒田港のグルメを探求したい。

01旧東田川役所★DSC00006.JPG17旧東田川役所★DSC00068.JPG23新民館★DSC00125.JPG26安良町公民館★DSC00114.JPG
27椙神社★DSC00164.JPG45★DSC03204chil.jpg48★DSC03116.JPG65★DSC03406.JPG73★DSC03589.JPG
75出羽遊心館★DSC00197.JPG82オランダ煎餅FC★DSC04016.JPG93イカ恋食堂★DSC03956.JPG

郡制時代を伝える建物が当時の場所にそのままに。
国指定の史跡でもある東田川文化記念館。

 今回最初に向かったのは鶴岡市の藤島地区にある「東田川文化記念館」。明治・大正の建物3棟と藤島地域の歴史資料などを収蔵している、レトロ建物ファンには嬉しい見学スポットだ。

 明治11(1878)年、明治政府は郡制を敷くが、旧東田川郡の郡役所が置かれたのがこの藤島。庄内平野のほぼ中央になり、鶴岡市の中心街からは車で15分ほど。 

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 館内には「旧東田川郡郡役所」「旧東田川郡会議事堂」「旧東田川電気事業組合倉庫」の3棟が建築当時そのままの場所に修復保存されている。

 旧郡役所及び旧群会議事堂は県指定の有形文化財、さらに土蔵を含む敷地全体が国指定の史跡となっている。「これで入館は無料なんて素晴らしい!」と相方もご満悦だ。

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 まずは「旧東田川電気事業組合倉庫」で受付を済ませる。郡制が廃止された大正12(1923)年に、東田川電気事業組合が発足。その資材倉庫として大正末期に建てられたのがこの建物だ。

 一見和風だが1階のテラス風の下野など、西洋風の建築様式も取り入れられている。また、玄関上の「東」の文字は組合のシンボルマーク、電柱と稲妻を模したデザインに大正モダンを感じる。

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 建物内は展示室になっており、2階では東田川の歴史を伝えている。ここ藤島は、奈良時代に出羽国府が置かれて栄えてきた歴史を持つ。また最上川支流の藤島川を通じて古くから舟運が行われていた場所でもある。

 特に見ておきたいのは「独木舟(まるきぶね)」と呼ばれる一本杉をくり抜いて作られた舟だ。長約14m。現存する独木舟の中では日本最大。平安時代後期に伐採・建造されたと推定され、往時の隆盛ぶりが偲ばれる。

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 他にも東田川から出土した縄文時代以降の出土品や、国府時代の藤島城の復元模型などが展示されており、1階の象ギャラリーもユニークだ。

 次の見学は「旧東田川郡会議事堂」。明治36(1902)年頃の建築と言われる。創建者は不明だが、擬洋風建築と呼ばれる和洋折衷の建物だ。

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09旧東田川役所★DSC00034.JPG11旧東田川役所★DSC02528.JPG10旧東田川役所★DSC00038.JPG
 木造2階建ての1階は、廻り廊下の内側に和室があるつくり。現在は鶴岡市立図書館藤島分館として利用されている。畳の感触が落ち着く空間に、約2万冊の蔵書がびっしり。

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 2階は「明治ホール」と名付けられた、レトロな雰囲気が漂うおしゃれなイベントホール。利用の用途は広いが、とりわけコンサートにおいては、木のぬくもりある音響が楽しめると好評とか。

 最後に「旧東田川郡役所」に向かう。現存する建物は明治20(1887)年に再建されたもの。郡制が敷かれた当初に創建された初代の建物は、明治19(1886)年の大火で焼失したという。

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 再建時の棟梁は高橋兼吉とその子厳太郎といわれるが、高橋兼吉は当時庄内随一と謳われた人物だ。以前このブログでも紹介した、西田川郡役所(鶴岡市)や山居倉庫(酒田市)なども手がけている。自分達の中ではすっかりおなじみだ(笑)。

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 もともとの旧東田川郡役所も西田川郡役所と同様のハイカラな洋風建築だったそうだが、再建後は純和風の重厚な建物に生まれ変わっている。

 木造平屋建て、建物の内側に中庭のある、回遊式のロの字型構造。随所で伝統的和風建築と西洋的な建築技術を絶妙に調和させている造形はさすがというべきか。

13旧東田川役所★DSC00099.JPG16旧東田川役所★DSC02596.JPG
17旧東田川役所★DSC00068.JPG20旧東田川役所★DSC02587.JPG
 建物の中には、旧郡長室などが当時の面影のまま残されている他、東田川の文化を伝える品物や資料の展示がされている。当時の暮らしぶりを知る台所の様子や、米どころでもある藤島地区に伝わる藁細工文化なども興味深い。

21旧東田川役所★DSC00090.JPG18旧東田川役所★DSC02581.JPG19旧東田川役所★DSC02575.JPG

■東田川文化記念館(ひがしたがわきねんかん)
●住所/山形県鶴岡市藤島字山ノ前99
●駐車場/あり
●開館時間/9:00〜16:30
●休館日/毎週月曜日、年末年始(12月29日から翌年の1月3日まで)
●入館料/ 無料
●問合せ/0235-64-2537
●URL/鶴岡市-東田川文化記念館


街並みの中に地元住民が守る歴史的建造物。
伝統と思いが息づく大山地区。

 少し車を走らせて、鶴岡の中心街から15分ほど西に位置する大山地区へ。この大山は、江戸時代に天領であった歴史を持ち、酒造りのまちとしても知られている。

 今回のお目当は大山小学校のグラウンド横に移築保存されている「新民館」。明治35(1902)年に建てられた大山尋常高等小学校校舎の一部で、正面玄関とわずかな教室のみが現存する。


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 二階建ての木造校舎はどこか郷愁を感じさせつつ、玄関上のバルコニーが印象的だ。案内の看板には明治の名匠の手になると説明されているが、人物名までは記されていない。

 新民館の名前は、明治9(1876)年に新設された同校が、明治20(1887)年まで「新民学校」と呼ばれていたことに由来するという。

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 校舎の中には、当時の教科書や教室のしつらいやなどが保管されているということだが、残念ながら、一般公開はされていないようだ。(GW、お盆、大山新酒酒蔵まつりの時期にのみ公開されているとの情報もあるが、古い情報ソースなので各自で確認願いたい。)

 また、現地に駐車場はなく、周辺も通学路なので要注意。車の場合は近隣の駐車場を利用し、徒歩で散策することをおすすめする。

■新民館(しんみんかん)
=旧大山尋常小学校校舎(きゅうおおやまじょんじょうしょうがっこうこうしゃ)
●住所/山形県鶴岡市大山2丁目20-2(鶴岡市立大山小学校敷地内)
●駐車場/なし
●管理者/大山小学校(所有者/大山小学校同窓会より委託)


 新民館から徒歩5分足らずの場所には「旧鶴岡警察署高橋兼吉」がある。明治18(1885)年、この場所に建てられた木造2階建ての擬洋風建築だ。以前紹介した旧鶴岡警察署庁舎(明治17年竣工・鶴岡市致道博物館に移築保存)にも似た雰囲気がある。

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 棟梁は高橋権吉。旧大山分署の本署にあたる旧鶴岡警察署を手がけたのは高橋兼吉。ちょっと名前がややこしいが、権吉は兼吉の副棟梁を勤めたこともあり、親戚筋でもある。

 小さいながら明治期の典型的な擬洋風建造物として貴重。平成9(1997)年に大幅な改修工事が完了し、平成10(1998)年には国の有形文化財に指定された。「(旧鶴岡警察署の)ミニチュア版みたいで可愛らしい。」とは相方の弁。

安良町公民館DSC09710.jpg26安良町公民館★DSC00114.JPG
 昭和50(1975)年に鶴岡市から大山地区安良町に譲渡された後は、安良町の公民館として活用されており、一般公開はされていない。内部を見学することはできないが、ぜひ新民館とセットで外観を楽しんでほしい。

■安良町公民館(あらまちこうみんかん)
=旧東田川郡警察署大山分署(きゅうひがしたがわぐんけいさつしょおおやまぶんしょ)
●住所/山形県鶴岡市大山2丁目23−23
●駐車場/なし
●管理者/安良町町内会


 近くの「椙尾神社(すぎのおじんじゃ)」にも立寄ってみた。庄内三大祭りのひとつで300年以上続く「大山犬祭り(6月5日)」が開かれるのがここだ。昔、化け物と戦って村を救った「めっけ犬」の伝説にちなむのだだとか。

28椙神社★DSC00144.JPG29椙神社★DSC00148.JPG 
 参道の途中に、紅白の首輪をつけた狛犬が祠の中に鎮座している。おもわず「可愛い」と声が出る。まるまるとしたフォルムは「めっけ犬」を模したものだろうか?

32椙神社★DSC02645.JPG30椙神社★DSC00160.JPG
 神社の創建は定かではないが、伝承によれば奈良時代以前の5世紀半ばにさかのぼる。少なくとも中世鎌倉以降、歴代領主の庇護を受けて信仰を集めてきた。 

 参道口の鳥居は石造り。桃山時代末期のもので、島木と笠木は一石で作られ、関西文化の影響がみられるという。県指定有形文化財でもある。


■椙尾神社(すぎおのじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市馬町宮ノ腰169
●参拝料/ 無料
●問合せ/0235-33-3213(大山観光協会)/0235-33-0044(椙尾神社)


新しいお部屋で宿時間の楽しみ方がまたひとつ。
「いさごや」での美味なる体験。

 いつもお世話になっている「いさごや」に到着。真冬の厳しさはゆるんだとはいえ、日本海の波はいまだ荒い。
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 ロビーに入ると雛飾りのしつらい。庄内のひな祭りは旧暦で催される。ギャラリーには貴重な古代びなも。

 今回のお部屋は新設されたプレミアムフロア「无境(むきょう)」の一室。おしゃれな和モダン。窓が広々として一層良い眺めが旅閉める。

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 そしてなんと半露天風呂つき。大人二人が入れるゆったりサイズの湯船。何もかもがワンランク上の贅沢感。アメニティーも可愛い巾着付きで細やかな配慮が嬉しい。

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 今宵の夕餉のテーマは「春を待つ」。前菜の器もお雛様仕様で季節感ばっちり。食前酒も「桃酒」というこだわり。別注の冷酒は「楯野川 凌冴 純米大吟醸」。超辛口なれどすっきりフルーティ。

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 お造りはイシナギ、ホウボウ、甘エビ、焼き物にはベニズワイガニ、目の前で焼き上げてくれるアワビ。いうことなくいずれも絶品。温者にはノドグロの煮付け。柔らかく上品な甘辛さがまさに美味。

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 すき焼きの鍋の上に乗っているのは綿菓子。火を入れると溶けて割り下になるという趣向。肉はもちろん米沢牛。締めの食事は鯛茶漬け。デザートはイチゴのジェラートとチョコレートトルタ。


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 食事の後は大人の夜時間。ラウンジで読書をするもよし、お部屋で露天風呂を楽しむも良し。


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 朝食は料亭の個室で海を見ながら。タイトルは「弥生の朝」。いつも楽しみな旬のお魚は宗八鰈の一夜干しと銀鱈の煮付け。鰈の身は柔らかく縁側はぱりぱり。銀鱈はぷりぷりとろとろでうまうま。


■游水亭 いさごや(ゆうすいてい いさごや
●住所/山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
●泉質/ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含塩化土類食塩泉)
●駐車場/あり
●問合せ/0235-75-2211
●URL/http://www.isagoya.com/(公式)


今の匠の粋を集めた現代和風の木造建築。
景観ともマッチも見事な「出羽遊心館」。

 二日目は少し趣向を変えて酒田方面へ。「出羽遊心館」は酒田市の生涯学習施設。広大な庭園と数奇屋造りの現代和風建築は、公共建築百選ややまがた景観デザイン賞を受賞している。

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 設計は茶室研究や数寄屋建築の大家で京都伝統建築技術協会理事長の中村昌生氏。天然の樹木をふんだんに使用し、各部屋それぞれにデザインされた照明器具が設置されているなど、各所にこだわりの意匠が施されている贅沢なつくり。

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 館内ではお茶とお菓子をいただくこともできる。料金は抹茶150円、抹茶と和菓子のセットが450円。3日前までに予約すれば上生菓子の和菓子がいただけるそうだ。この日は飛び込みだったので生菓子ではなかったが、ひな祭りにちなんだお菓子をいただくことができた。


■羽遊心館(でわゆうしんかん)
●住所/山形県酒田市飯森山三丁目17番地の86
●駐車場/あり
●見学時間/9:00〜17:00
●休館日/毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
●見学料/ 無料
●問合せ/0234-31-3737
●URL/酒田市役所-羽遊心館


酒田民のソウルフード「オランダせんべい」。
おいしさを産みつづける工場に潜入。

 薄くてパリパリちょっぴりなつかしい風味の「オランダせんべい」は誰もが一度は口にしたことがえるのではないだろうか?実は酒田の会社が作っている。製造販売元の酒田米菓の工場が見学できるということなので行ってみた。

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85オランダ煎餅FC★DSC00248.JPG82オランダ煎餅FC★DSC04016.JPG
 軽い気持ちで入ってみたものの、どこまでも続く工程ラインがすこい。全長なんと545m!日本一の長さなんだとか。とにかく歩く歩く。途中、できたてのおせんべいの試食を楽しみつつ、もはや行脚気分(笑)。

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 長い通路にはオランダせんべいの歴史や、お米への思い入れ、おいしさへのこだわりがわかるコーナーが併設されているほか、キッズが楽しめる工夫などもされている。

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 2階はお土産コーナーと手焼き体験コーナー。商品棚にはびっくりするくらいの種類があって選ぶのに迷う。相方も「こんなにいろんな商品があったなんて知らなかった〜。」と嬉しい悲鳴をあげていた。

 ちなみに気になるのが「オランダせんべい」の名の由来。なぜオランダ?と不思議だったが、実は山形の方言で「オラダ(私たち)のせんべい」という意味なんだとか。


■オランダせんべいFACTORY(おらんだせんべいふぁくとりー)
●住所/山形県酒田市両羽町2-24
●駐車場/あり
●工場見学/9:30~16:00(最終入場15:40まで)
●売店/9:00~17:00
●定休日/毎週月曜日(祝日の場合営業、後日振替休日)
     12月31日、1月1日休業 ※その他臨時休業有
●工場見学入場料/ 無料
●問合せ/0234-25-0017
●URL/酒田米菓公式サイト


一度食べれば美味さの虜に。
酒田港のイカに恋する「イカ恋食堂」。

 たくさん歩いて腹ペコ状態で向かったのが、酒田港埠頭の交流説「SAKATANTO」。海を見ながら食事ができるフードコートには山形・庄内産の食材を使ったお店が揃う。

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 中でも今回のお目当は「イカ恋食堂」。なんといっても酒田港で水揚げされる「酒田船凍いか」を使った新鮮なイカ刺しメニューが魅力だ。どれも美味しそうで目映りするが、まずは定番「イカ恋重(790円)」。そして「イカ恋ニクそぼろ重(990円)」。

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 どちらもオリジナルの「イカの肝醤油」をかけていただく。とにかくイカがむちゃくちゃ旨い。オクラのつるつる食感もいいニュアンスだ。そしてなんと付け合わせの温泉卵と塩辛はおかわり自由!この塩辛がまた美味しい。

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 程よく満腹になったところで今回の旅は終了。酒田港埠頭の景色を眺めつつ余韻を味わいながら帰路につく。毎回思うが、知るほどに奥が深い庄内の旅であった。

■イカ恋食堂(いかこいしょくどう)
●住所/山形県酒田市船場町2-5-15(SAKATANTO内)
●駐車場/あり
●営業時間/10:00~17:00
●定休日/毎週水曜日
●問合せ/0234-25-0102
●URL/SAKATANTO公式サイト


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4月 鶴岡三寺社の御朱印めぐり

羽黒山・庄内神社・善寶寺の鶴岡三寺社めぐり。
麗らかな晩春の日に感謝と祈りを捧げる旅。

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2023年4月某日

 今年の桜前線は記録的な速さで北上し、あっという間に盛りを過ぎてしまった。こんな中、ウィズコロナもそろそろ新しい局面を迎えそうだが、これまで大過なく過ごせてこれた感謝をこめて、鶴岡の三寺社めぐりを思い立つ。

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 御山の神「出羽三山神社」・大海の神「善寳寺」・城下の神「荘内神社」。コロナ収束を願って立ち上げられた「つるおか三寺社祈りプロジェクト」にあやかって、山・海・城下町を護る三つの祈りの場を巡ってみたい。


羽黒山山頂に鎮座する出羽三山の「三神合祭殿」。
開山千四百年の篤い信仰を集める生きかえり巡礼。

 出羽三山とは、月山、羽黒山、湯殿山の総称。月山=過去、羽黒山=現在、湯殿山=未来をあらわし、三山を巡ることで死と再生をたどり、生きながら生命がよみがえるとされる。

 出羽三山神社とは三山それぞれの神社の総称であるが、羽黒山山頂には、この三山の神を合祀した「羽黒山三神合祭殿」が鎮座し、三山のお参りが一度にできる。

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02出羽三山神社★DSC00196.JPG04出羽三山神社★DSC04390.JPG06出羽三山神社★DSC00017.JPG
 山頂へのルートは2つ。徒歩で石段を登るか、車で行くか。山頂へ続く「羽黒山自動車道」は有料となるが、迷わず車でのルートを選択した(笑)。

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 厳かな雰囲気が漂う境内は、歴史の重みを感じる。「三神合祭殿」と「鐘楼」はともに重要文化材に指定されている。

 茅葺の「三神合祭殿」は後方にある本殿と前面の拝殿が一体となった複合建築となっており、中世の様式を残した大建築として、また、類例の少ない修験関係の建築としても貴重だ。

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 御朱印をいただける場所もふたつあり、今回は山頂の社務所でいただいた。もう一箇所は麓の石段の登り口にある。

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 境内には様々な神様をお祀りした末社もずらり。たくさんの下駄や靴が奉納されている「建角身(たけつぬみ)神社 」もそのひとつ。

 祭神の建角身命(たけつぬみのみこと)は、旅の安全と健脚の守り神とか。相方は「この神様の別名、八咫烏ですって。」とちょっぴりテンションが上がっている様子。


延々と続く石段を囲む神聖な杉並木と
凛と佇む東北最古の五重塔の荘厳。

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 再び車で山を下って、表参道入り口に。朱塗りの「随神門」が羽黒山の本来の表玄関だ。門の傍にある「天拝石」は、かつて修験者の行法を行った場所にあったものと伝わる。


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 随神門に鎮座し、聖域への悪霊の侵入を防ぐの番人としておわすのが、左が櫛石窓神(くしいわまどのかみ)、右が豊石窓神(とよいわまどのかみ)の両神。ちなみに山門脇にある社務所が、御朱印の授与所にもなっている。

 門をくぐればいよいよ神域だ。まずはいったん下へと降りて行く。この参道の脇にもいろんな神様方をお祀りしたお社が点々と。

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  この坂の下りきったところにあるのが祓川にかかる赤い神橋。橋のたもとの岩戸分神社の背面に落ちる須賀滝は、江戸時代に引かれた人工の滝なんだとか。


 参道を両側から囲むのは「羽黒山の杉並木」として知られる樹齢350〜500年の見事な杉並木。この木々たちの長老ともいうべき存在が、樹齢1000年を越すと言われる爺杉(じじすぎ)だ。


 以前は婆杉(ばばずぎ)もあったらしいが、1902(明治35)年の暴風で折れてしまったらしい。「実にもったいない」と相方も嘆くことしきり。


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 そして爺杉のすぐ近くにそびえるのが、国宝「羽黒山五重塔」だ。総高約29.2メートル、 東北地方では最古の塔といわれ、平安時代中期・平将門の創建とも伝わるが、定かではないとのこと。

 現在の塔は、約600年前に再建されたものといわれている。塔身は一切の彩色等を施さない素木の塔だが、そのストイックさがかえって神聖な美しさをともなって圧倒される。

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 五重塔の先からは、ひたすら山頂への石段(総数2,466段)が続く。今回は山頂へのお参りは済んでいるし、五重塔の拝観がかなったので、ひとまずここでUターンして再び隋神門隋神門の周辺には宿坊街もあり、いつか泊まってみたいものだ。


■羽黒山(はぐろさん)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町手向
●駐車場/あり
●問合せ/0235-62-2355(8:30〜17:00)
●URL/http://www.dewasanzan.jp(出羽三山神社公式サイト)



領民に慕われた領主様をお祀りする「庄内神社」。
いまなお城下町の守護神として親しまれる。

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 庄内藩の領主・酒井家の4人の先祖を祀る「庄内神社」には、昨年の4月にも訪れている。鶴岡市街地の「鶴岡公園」の中にあり、昨年は爛漫の桜が出迎えてくれたが、今回はたくさんの花を手水に浮かべた「花手水」の歓迎をうけた。おもわず「きれい」と声が出る。

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 約400年前に入部して以来、戊辰戦争終結までこの地を治めた酒井家と領民の結びつきは深く、1877(明治10)年の創建は、旧藩主を慕う庄内一円の人々の創意によるもの。神社としての歴史は比較的浅いものの、今なお変わらず市民に親しまれている。

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 境内の「宝物殿」では酒井家ゆかりの武具、美術工芸品などが展示されているが、この日は五月人形の企画展が開催されていた。忠臣蔵・大石内蔵助の五月人形も。

 酒井家は徳川家とのゆかりも深く、初代庄内藩主として入部した酒井忠勝は、徳川四天王の筆頭と称されたあの酒井忠次の孫にあたる。また、譜代大名にありながら江戸幕府による転封が一度もなかった数少ない例のひとつでもある。

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 御朱印をいただいている間、相方はおみくじつりに夢中。鯛の張り子の中におみくじが入っているのだが、これぞエビでタイを釣るの図である。

■庄内神社(しょうないじんしゃ)
●住所/山形県鶴岡市馬場町4-1(鶴ヶ岡城址鎮座)
●駐車場/あり(鶴岡公園駐車場)
●拝観料/無料
●授与品頒布/8:30-17:00
●宝物殿開館時間/9:00〜16:30(無料)
●問合せ/0235-22-8100(庄内神社)
●URL/http://jinjahan.com (庄内神社公式サイト)



魅力いっぱいのお部屋「波の綾」。
いさごやの新しい過ごし方を発見。

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 今回の「游水亭 いさごや」のお部屋の風情は一味ちがう。「波の綾」は10階に設えられた新しいお部屋だ。水面に映る波模様を綾織にたとえたというイメージがコンセプトとか。相方は一目で気に入った様子。

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 テラスがあるお部屋は湯野浜唯一だそうな。さらに檜の浴槽が嬉しいテラス続きのお風呂まで。半露天仕様だが、扉を開ければ海と湯舟の境界線がなくなる露天風呂に。開放感もひときわ。

 ウォークインクローゼットや数寄屋風の次の間、さらにはミニキッチンも付いていてこれぞ贅沢の極み。 いさごやに滞在する魅力と楽しみがまた増えた。

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 端午の節句仕様のロビーラウンジ。池のハスは晩春の光をうけて柔らかく光っている。「なんだかモネの絵みたい」と相方がつぶやく。

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 日中の明るい日差しもいいが、夕暮れの風情はさらにいい。この夕日の感じ、日本海に面した宿の真骨頂、醍醐味ともいえる。

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 この日の夕食のおしながきは「端午の節句によせて」。食前酒に梅酒、先付に河豚白子よせ、前菜は同じ河豚煮凝りと桜鯛若草焼、浅利に孟宗、蛍烏賊に水蛸蒸しなど、名残の春を味わい尽くす趣向のよう。造りは庄内浜地魚盛合せと称して、石持、平目ソイ、甘エビの四趣盛。

 お酒は純米大吟醸「白露垂珠」BUONO。すっきりフルーティーで飲みやすい。型の違うおちょこが2つ付いているのは、おちょこの形状で変わってくる香りを比べて楽しむため。口の広いおちょこの方が、華やかな香りがより広がるように感じる。

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 焼物は、月山筍と旬の魚・桜鱒のオレンジ幽庵焼にジェノベ‐ゼソース。客前焼き物は月山のアスパラと鮑の踊り焼。紫色のアスパラははじめて!しかし焼くと緑色に大変身。そうこうしているうちにアワビもいい感じ。

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 山形牛のしゃぶしゃぶ、春野菜がきれい。「すみれの花って食べられるのね」と相方も驚いている。お食事は孟宗筍の御飯と蛤の潮汁。ラストのデザートにはイチゴのズッパ。イチゴジェラート?と生イチゴをカスタード風のクリームに浮かせたもの。ズッパとは食べるスープという意味らしい。

 お水をオーダーすると、お酒と同じ白露垂珠の仕込み水を紹介された。すっきりと湧水のような口当たり。出羽三山の霊験あらたかなミネラルウォーターなのでコットンに含んでお肌につけるのもおすすめとか。

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 ごはんの後に相方が予約していたのは、貸切露天風呂「ハイプライベートSPA 漣」。お部屋のお風呂も最高だけど、漣の風情も捨て難いそうだ。とことん宿を楽しむつもりらしい。翌朝ももちろん朝飯前に湯三昧。

貸切露天風呂「ハイプライベートSPA 漣」
●スタンダードプラン45分間/3,300円(税込)
●プレミアムプラン45分間/5,500円(税込)
※要予約

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 朝食はいつものように、からだに優しい朝メニュー。四月なので「卯月の朝」。出立前にラウンジでオーダーしたのは「山形産さくらんぼクリームソーダ」。ほんの〜りとピンク色のサイダーにさっぱりとしたバニラアイスが浮かんでいる。これで本日も元気に動けそうだ。

■游水亭 いさごや(ゆうすいてい いさごや
●住所/山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
●泉質/ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含塩化土類食塩泉)
●駐車場/あり
●問合せ/0235-75-2211
●URL/http://www.isagoya.com/(公式)



海を守護する龍神信仰の「善寳寺」。
千余年の歴史ある境内の建築と意匠は匠の粋の宝庫。

 善寳寺は龍神信仰の寺として知られ、航海安全や大漁を祈願など海の守護神として全国的な信仰を集めている。また、曹洞宗三大祈祷所のひとつでもある。

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 前身となった龍華寺が開かれたのが平安時代、6万5千坪もの境内の中に、6つの国指定文化財を含んだ大小25棟の堂塔伽藍が置かれており、そこかしこが文化財築だらけ。建築そのものも、施された彫刻などもみどころだ。

75善寶寺★DSC00477.JPG111善宝寺★DSC05246.JPG84善寶寺★DSC05254.JPG80善寶寺★DSC00496.JPG
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 善寳寺には山門と総門の2つの門があり、どちらも有形文化財に登録されている。総門には十二支などの立体的な彫刻が施されている。繊細な透し彫りも見事。

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 山門は、総欅造り・銅板葺きの重厚な二重門。両脇には十六羅漢、また「毘沙門天」を右に「韋駄尊天」左に配し、土地建物を守護している。

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 高さ38メートルの五重塔も国指定の有形文化財。海の生き物達の供養塔「魚鱗一切之供養塔」として建てられた。塔の側面には十二支彫刻されているが、辰だけは鯉の姿で掘られている。

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 山門をくぐって階段を上ると本堂だ。本堂の右が御守札授与所となっており、ここで御朱印をいただける。本堂のさらに上の奥に龍王殿がある。

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92善寶寺★DSC05301.JPG93善寶寺★DSC05308.JPG
 御守札授与所(社務所)から上がらせていただいて建物の中へ。相方が巨大な木魚を発見。さすが日本有数の大祈祷道場。全体的にスケールが大きい。本堂の奥の慈照殿は展示館となっており、善寶寺の歴史や宝物が展示されている。

94善寶寺★DSC00606d.jpg76善寶寺★DSC00618.JPG
 善寳寺では、531体全ての羅漢像を修復する「五百羅漢像修復プロジェクト」がすすんでおり、現在五百羅漢堂の拝観はできない。そのかわりと言ってはなんだが、修復の工程をレプリカを使って詳しく解説する展示もあった。完了予定は2035年とまだまだ先だが楽しみだ。

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 いったん社務所へ戻ってから社務所奥の信徒会館へ。その広間には現代の京仏師 櫻井覺山氏による美しい聖観音菩薩様と無邪気な布袋様がいらっしゃった。観音様は「水と庄内の風土」をモチーフに造られたのだとか。

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 御朱印は何種類か用意されていて、選ぶことができる。この絵柄は綺麗だと言って相方が選んだが、龍女成仏の場面だろうか?


龍神様の棲まう神秘の聖地「貝喰池」。
悠々と泳ぐ黄金の人面魚も健在。

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 善寳寺には、竜宮竜道大竜王、戒道大竜女の二龍神が寺号を授け、寺内の貝喰池に身を隠したという伝承が残っている。ここがその貝喰池だ。どことなく神秘的な雰囲気が漂う。

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 貝喰池の奥には龍神様をお祀りする龍神堂が建立されている。その裏手には「お水取り浄域」があって山の恵みのお水をいただくことができる。

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 池の中で甲羅干しをする亀たち。池の中にはたくさんの鯉も。実はかつて話題になった人面魚もここの住人だ。うまく出会えるかどうか心配だったが、ちゃんと姿をあらわしてくれた。悠然と泳ぐ姿を直に拝見できたのもご利益か?

龍王尊祈祷道場 善寳寺(りゅうおうそんきとうどうじょう ぜんぽうじ)
●住所/山形県鶴岡市下川字関根100
●駐車場/あり
●問合せ/0235-33-3303
●URL/http://ryuoson.jp(公式サイト)



庄内のソウルフード「麦切り」。
ツルっシコっを堪能する名店「目覚屋半兵エ」。

 ツルツルシコシコの独特の食感は、うどんのようでうどんじゃない。それが庄内グルメのひとつ「麦切り」だ。

 創業明治6年の目覚屋半兵エは、地元民にも愛される名店。名前の由来は、店主が寝る時間も惜しんで味を追求したからとも、目が覚めるほど旨いからとも。

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 メニューにはお蕎麦もあるけど、相方の「ざる麦切り一択。」のツルの一声で決まり。この食感は食べことがない人には伝わらないかもしれないが、やっぱり旨い。(普通盛750円・大盛870円)

■目覚屋 半兵エ(ねざめや はんべえ)
●住所/山形県鶴岡市馬町枇杷川原74
●駐車場/あり
●定休日/水曜日 第2火曜日  
●営業時間/10:00〜15:00
●問合せ/0235-33-2257
●URL/hhttps://www.creative-tsuruoka.jp/project/people/No45.html 
   (鶴岡食文化創造都市推進協議会)


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11月 酒田紀行 松山藩ゆかりの地と日和山公園界隈を巡る

庄内藩の支藩・松山藩ゆかりの地と
本間様のお膝元日和山公園界隈を巡る酒田紀行。

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2022年11月某日

 今回は久々の酒田市メインの旅を計画。初日は郊外の松山地区。翌日は市街地の日和山公園界隈と気分は二本立てだ。

06総光寺★DSC00003.JPG03松山歴史公園★DSC00128.JPG96湯野浜★DSC00654.JPG25★DSC01067.JPG
66本間家別館★DSC00354.JPG57本間家旧本館★DSC01710.JPG77日枝神社★DSC01633.JPG71光丘文庫★DSC01604@.jpg88日和山公園★DSC00160.JPG


きのこ杉が並ぶ由緒ある禅寺、
四季折々の庭園も美しい洞瀧山總光寺。

 今回のお目当てのひとつが、参道に約120本もの「きのこ杉」が並ぶ洞瀧山總光寺。南北朝時代の1384(弘和4・永徳4)年、、月庵良圓禅師が開山。伊勢守佐藤正信公が創建した曹洞宗の禅寺。

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 「きのこ杉」は、その名の通り、きのこのように樹形が整えられた杉。形も大きさも可愛らしいが、樹齢はなんと約400年にもなる古木だ。1615(元和元)年に26代儀春和尚が植樹、以来歴代の住職の手により大切に手入れされてきた。

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 1811(文化8)年に建立された山門を守る仁王像は、堂々とした体躯ながら、どことなく親しみのあるお顔立ちのお姿だ。庫裡に下げられている、全長215mの巨大な木魚もみどころのひとつ。梆(ほう)と呼ばれる曹洞宗独特の法具で、食事の合図に鳴らしていたそうだ。

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 本堂からは紅葉に色づく美しい庭園を眺めることができた。この『蓬莱園(ほうらいえん)は、国の名勝庭園にも指定されており、四季折々の趣を見せてくれるという。

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■洞瀧山總光寺(とうろうざん そうこうじ)
●住所/山形県酒田市総光寺沢8
●駐車場/あり
●開館時間/9:00〜16:00(12月〜3月中旬まで休館)
●休館日/12月1日〜3月中旬(お参り・御朱印は通常通り ※予約が望ましい)
●入館料/大人 400円 中学生以下 200円 未就学児 無料
●問合せ/0234-62-2170
●URL/http://www.sokoji-sakata.com(公式サイト)



庄内藩の支藩「松山藩」の面影を残す城下町。
堂々たる大手門が往時を伝える松山歴史公園。

 總光寺の近くに気になる公園を見つけたので立ち寄ってみた。松山城跡を整備した「松山歴史公園」だ。この一帯は松山地区と呼ばれるが、かつては庄内藩の支藩となる二万五千石の松山藩が置かれた場所で、まちづくりにもその名残が見られる。

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 松山城は1779(安永8)年、幕府の許可を得て初めて築かれた。大手門は一度落雷により消失したが、1792(寛永4)年に酒田の本間家の寄進により再建された。江戸期の城門としては山形県内では唯一のものとなる。
 
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 公園内には茶室「翠松庵」や郷土文化保存伝承施設「松山文化伝承館」などがある。今回は残念ながら、伝承館休館日のため見学はできなかったが、藩政時代の武具甲冑、歴代藩主の書画軸、郷土画家の作品などが収蔵されているとか。

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■松山歴史公園(まつやまれきしこうえん)
●住所/酒田市字新屋敷36-2
●駐車場/あり
●開館時間/9:00〜16:30
●休館日(松山文化伝承館)/月曜日
●入館料(松山文化伝承館)/大人 400円 高校生 280円 小中学生 120円 幼児以下無料
●問合せ/0234-62-2632(松山文化伝承館)
●URL/ http://matuyama-net.com/rekishikoen/(NPO法人まちづくりnet松山)



小春日和のいさごやの休日。
暖色に染まる海景色と美味三昧。

 松山歴史公園からまっすぐ「いさごや」へ。時間にして30分ほど。いつもの寛ぎの空間にほっとする。

18客室夕陽★DSC00741.jpg
17客室★DSC0069chil.jpg19湯野浜★DSC00241.JPG
その夕日を独り占めできるのがプライベートスパ「漣」だ。なんという贅沢な時間。

20貸切風呂★DSC00775.JPG
21貸切露天風呂夕陽人★DSC00894.jpg22貸切露天風呂夕陽横顔★DSC00974.jpg
貸切露天風呂「ハイプライベートSPA 漣」
●スタンダードプラン45分間/3,300円(税込)
●プレミアムプラン45分間/5,500円(税込)
※要予約

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 いつしか陽もすっかりおちてラウンジもナイト仕様に。


 今宵の宴は霜月の膳「霜降りる」。食前酒の巨峰酒にはじまり、前菜には庄内柿やあけびなど秋ならではの食材がふんだんに。お造りにはチカメキントキやカカミ鯛などの地魚。焼き魚は脂ののった黒ムツ。

24夕食離れ★DSC01058.JPG25★DSC01067.JPG26★DSC01088.JPG32★DSC01097.JPG
 客前料理は焼きズワイ蟹。ずっしり詰まった甘い身とあつあつとろとろのカニミソ。今回オーダーした地酒は大山純米吟醸。日本酒度は+1.5〜2.5。やや辛口ですっきりフルーティー。

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 山形牛はしゃぶしゃぶでペロリ。土瓶蒸しには小鯛・しいたけ・銀杏・鶏肉。だしが美味。ご飯は庄内産はえぬきの新米。
33★DSC01160.JPG34★DSC01181.JPG35★DSC01208.JPG40★DSC01222.JPG
 デザートはアーモンドミルクのブランマンジェに洋梨ソース、バニラアイス添え。いつもながら美味。美味。満足。

43ゆのはま100年キッチン★DSC01243.JPG42ゆのはま100年キッチン★DSC01235.JPG
 宿の方のお勧めで、隣「ゆのはま100年キッチン」へ。令和4年8月26日に新オープンした新スポット。なかなかおしゃれでいい感じだ。

 地区内の空き地を利用したシェアキッチンで、食事の供給を地域全体で合理化するという面白いコンセプト。今後の展開が楽しみだ。

41ゆのはま100年キッチン★DSC01282.JPG44ゆのはま100年キッチン★DSC01273.JPG
■ゆのはま100年キッチン
●住所/山形県鶴岡市湯野浜1-8-43
●駐車場/あり
●営業時間/ランチタイムメ 11:30 - 14:00(ラストオーダー14:00)
      カフェタイム 14:00 - 16:30(ラストオーダー16:00)
      ディナータイム 18:00 - 21:00 (ラストオーダー20:30)
      バータイム 21:00 - 23:00(ラストオーダー22:30)
●定休日/火曜日・水曜日
●問合せ/0235-35-0280
●URL/https://yunohama100.com/kitchen/

45ホテル前白砂★DSC01347.JPG46海★DSC00247.JPG
 翌朝も天気は良好。だが、風がやや強い。そろそろ日本海の波も荒くなってくる季節だ。そんな中、朝の散歩を楽しむ人影も。

48大浴場露天風呂★DSC01558.jpg47大浴場★DSC01584.jpg
 朝にいただいた「庭園風呂 月水の湯」では、コロナで閉鎖されてたミストサウナが復活。ほんのりとオレンジのアロマが香る。

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 朝食の献立は「霜月の朝」。ご飯は新米のつや姫。デザートにはシャインマスカット、ゴルビ、ピオーネといっ高級ブドウ三種。

53庭の花★DSC01500.jpg54売店のご当地アイス★DSC01488.jpg
 出立前のラウンジでいただいたのは、だだちゃ豆アイスと素朴なパッケージが素敵な田村牛乳アイスクリーム。これでスイッチを入れて酒田の市街地方面へ向かう。

■游水亭 いさごや(ゆうすいてい いさごや
●住所/山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
●泉質/ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含塩化土類食塩泉)
●駐車場/あり
●問合せ/0235-75-2211
●URL/http://www.isagoya.com/(公式)



日本一の大地主とうたわれた本間家。
武家造りと商家造りが一体となった本間家旧本邸。

 かつて日本一の大地と言われ、その繁栄ぶりは「本間様には及びもせぬが、せめてなりたや殿様に」と歌われた本間家。1689(元禄2)年に越後から移住した初代原光が新潟屋を開業、三代目光丘が千石船の商いの他、地域事業にも関わりこの地で信用と財を成した。酒田では今もその偉業の名声と名残が色濃く残る。

56本間家旧本館★DSC00350.JPG55本間家旧本館★DSC00398.JPG61本間家旧本館★DSC01734.JPG
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 本間家旧本邸は1768(明和5)年に三代目光丘が建造した二千石格式の長屋門構えの武家屋敷だ。本間家から庄内藩主酒井家に献上されたが、のちに酒井家から拝領、本間家代々の本邸として使用された。桟瓦葺平屋書院造りで、武家造りと商家造りが一体となっている建築様式は全国的にも珍しいのだとか。

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 邸内は撮影禁止のため、外観のみの画像となるが、そのしつらいはさすがといった風格。よくぞ1976(昭和51)年の酒田大火から免れて残ってくれたと感謝すらする思いだ。

■本間家旧本館(ほんまけきゅうほんかん)
●住所/山形県酒田市二番町12-13
●駐車場/あり
●開邸時間/3月~10月:9:30~16:30
                11月~2月:9:30~16:00
●休館日/12月中旬〜1月下旬 展示替え日(不定期)
●入館料/大人 900円 中・高生 300円 小学生 200円
●問合せ/0234-22-3562
●URL/http://hommake.sakura.ne.jp(公式サイト)



本間家旧本邸の向かいに位置する別館「御店」。
商人としての本間家の顔を今に伝える。

 本邸の道路を挟んだ向かい側に位置するのが別館 お店(おたな)。初代原光が「新潟屋」を開業して以来、代々商いを営んだ場所だという。広大な畳敷きの店舗に当時の商売道具や資料などがずらりと並び、商人としての本間家の商いぶりを垣間見ることができる。
 
64本間家別館★DSC01745.JPG63本間家別館★DSC01769.JPG68本間家別館★DSC00382.JPG
65本間家別館★DSC01754.JPG
 また、酒田は火事が多く、それに備えて本間家が用意した消火道具も展示され、商人として稼いだ利を地域に還元しながら歩んできた様子も紹介されている。歴史的資料や庄内の文化を伝える品々の展示のほか、売店も設けられており、お買い物スポットとしても楽しめる。

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■本間家旧本邸別館 お店(ほんまけきゅうほんていぺっかん おたな)
●住所/ 山形県酒田市本町1丁目2-55
●駐車場/あり
●営業時間/3月~10月:9:30~16:30
                11月~2月:9:30~16:00
●休館日/不定期
●入城料/無料
●問合せ/0234-23-0809
●URL/http://hommake.sakura.ne.jp(公式サイト)


庄内浜の鮮魚が揃う、さかた海鮮市場。
併設「海鮮どんやとびしま」で新鮮美味な丼を堪能。
 
 庄内浜の海の幸を求めて「さかた海鮮市場」に。酒田港のすぐそばという立地。1Fフロアには庄内浜産の地魚を中心に、プロが目利きしたワンランク上の新鮮なお魚たちがいっぱい。調理方法も教えてくれる。

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 本日のランチはこの2Fにある「食事処 海鮮どんやとびしま」で。酒田港が目の前に広がる窓辺のカウンター席をゲット。湾路に行き交う船を見ながらのお食事だ。「海鮮どんや」という名前の通り、どれもこれも美味しそうな海鮮の丼がラインナップされていて、メニュー選びに迷ってしまう。

89さかた海鮮市場★DSC01678.JPG90さかた海鮮市場★DSC00337.JPG
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 さんざん目移りしたあげく、「極・海鮮丼」(1380円)と「海老天丼」(1280円)に決定。一見するとすごいボリュームだが、問題なくペロリと完食。もちろんお味はいうまでもなし。

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■さかた海鮮市場(さかたかいせんいちば)
●住所/山形県酒田市船場町2丁目5-10
●駐車場/あり
●営業時間/(1F 菅原鮮魚 さかた海鮮市場本舗)8:00~18:00
                    (2F 食事処 海鮮どんやとびしま)
                    【朝の部】7:00~9:00【午後の部】11:00~18:00 ※2月は全日17:00閉店
●問合せ/0234-23-5522(菅原鮮魚さかた海鮮市場本舗)
0234-26-6111(食事処 海鮮どんやとびしま)
●URL/https://www.kaisen-ichiba.net(公式サイト)



かつて北前船で栄えた酒田。
明神さんとして親しまれた海運の守り神、皇大神社。
 
 さかた海鮮市場海鮮から車で5分ほど。日本海を望む小高い場所にある日和山公園。この界隈には見所スポットがたくさんある。いったん公園の駐車場に車を停めて、徒歩で散策することに。

 皇大神社は、公園の南東側に隣接する静かな佇まいのお社だ。酒田はかつて北前船の寄港地として栄えた。船の船頭や荷主たちは、航海の安全を祈願するため、天照大神をまつる皇大神社、その境内に建てられた金刀比羅神社を必ずお参りしたという。

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 地元の人たちからは、この二社をあわせて「明神さん」として親しまれてきたが、北前船が役目を終えた後、徐々に寂れいつしか老朽化が進んでいった。

 その姿を憂いた地元の有志が資金を集い、10年ほど前にようやく修復されたのが今の皇大神社のだとか。境内には他にも小さな神社がいくつも祀られ、近くの町内の鎮守となっているそうだ。

■皇大神社(こうたいじんじゃ)
●住所/酒田市日吉町2
●駐車場/日和山公園駐車場利用



二体の即身佛をお奉りする湯殿山信仰の拠点。
弘法大師空海が開いたと伝わる砂高山海向寺。
  
 皇大神社から徒歩約5分。海向寺は、約1200年前に真言宗の開祖・弘法大師空海により開かれたと伝わる。江戸時代より出羽三山の湯殿山信仰の拠点となっていたが、住職は代々湯殿山法楽を伝承し、湯殿山行者の秘法の寺として知られる。

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 庄内地方に6体ある即身仏のうち、忠海上人、円明海上人の2体が安置されており、ガラス越しではあるが間近に拝観することができる。衆生済度の為に自ら仏となった尊いお心とお姿に思わず手を合わせずにはいられない。一つの寺に二体の即身仏をお奉りしているのは全国でもここのみ(撮影禁止)。

■砂高山 海向寺(しゃこうさん かいこうじ)
●住所/山形県酒田市日吉町2-7-12
●駐車場/あり
●拝観時間/4月〜10月:9:00~17:00
    11月〜3月:9:00~16:00
●休館日/火曜日 1月1日〜3日
●拝観料/大人 400円 高校生 300円 小・中学生 200円
●問合せ/0234-22-4264
●URL/https://kaikouji-sakata.jimdofree.com(公式サイト)



本間家の蔵書を集めた酒田の文化の殿堂。
酒田初の鉄筋コンクリート建造物、旧光丘文庫。
   
 旧光丘文庫は、1925(大正14)年に建てられた酒田初の鉄筋コンクリート建造物。間家の蔵書を中心に有志家による数万点の貴重な蔵書を集めて設立された。「光丘文庫」の名は、文庫を兼ねた寺院の建立を望んでいた本間家三代目の当主光丘(みつおか)に由来する。

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 左右に翼を張った社殿造りのユニークな外観と貴重な蔵書は全国の注目を集め、皇族をはじめ、学者、軍人、芸術家が多く来館したという。

 1982(昭和57)年までは市立図書館としても利用されてきたが、施設の老朽化にともない所蔵資料と文庫機能は移転され、現在は外観のみ見学可能となっている。

72光丘文庫★DSC01614.JPG73光丘文庫山王亭★DSC01623.JPG
 敷地の奥には、中国様式六角千鳥風建築の東屋「山王亭」がある。1984(昭和59)年に市民の募金によって建てられたのだとか。

■旧光丘文庫(きゅうこうきゅうぶんこ)
●住所/山形県酒田市日吉町2-7-12
●駐車場/日和山公園駐車場利用
●外観のみ見学可
●問合せ/0234-24-2996(酒田市立図書館)0234-21-8351(酒田市教育委員会)
●URL/https://sakata-kankou.com/spot/30128(酒田観光物産協会)
           https://shonai-yamagata.com/tourism-leisure/hikarigaokabunko/index.html(庄内コンシェルジュ)
           https://www.city.sakata.lg.jp/bunka/bunkazai/rekishibunkashisetsu/koukyuubunko.html(酒田市役所)



本間家が建立した社殿は細工も見事。
山王祭で賑わう日枝神社。
    
 日枝神社の創建年は不明だが、大己貴神、大山咋神、胸肩仲津姫神の三神を祀る。室町時代後期に酒田に遷座され産土神になったと伝えられる。

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 現在の社殿は、1784(天明4)年に本間光丘が建立。1894(明治27)年の震災で随神門が倒壊したが、本間光輝が再建し今に至る。門の下でかしわ手を打つと日光の鳴龍にもおとらない響きとも。

 また、本殿の「至勢通神」の額は東郷平八郎、鳥居の「日枝大神社」の額は西郷隆盛によるもので、ここも見ておきたいところ。

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 5月の例祭「山王祭」は1609(慶長14)年から続いており、1979(昭和54)年からは「酒田まつり」として酒田を代表するお祭りのひとつとなっている。神輿を中心とした渡御行列や傘鉾など約50台の山車行列で賑わう。

■日枝神社(ひえじんじゃ)
●住所/酒田市日吉町一丁目地内
●駐車場/日和山公園駐車場利用
●問合せ/0234-22-0274(日枝神社)0234-26-5809(酒田市役所 地域創生部 )
●URL/https://www.city.sakata.lg.jp/bunka/bunkazai/rekishibunkashisetsu/hiejinjya.html(酒田市役所)



大正期の医療建築の原形。
酒田市唯一の木造洋風建築、旧白崎医院。
    
 旧白崎医院は白亜の木造洋風建築。大正4年(1915年)着工、大正8年(1919年)に竣工した。当時の院長である白崎敬之助が設計し、酒田出身の名工小松友治郎が棟梁をつとめた。

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 酒田市で唯一の木造洋風建築であるのみならず、大正時代の木造洋風医院建築の原型がこれほど完全な形で保存されている例は他にはないそうだ。

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 一階は外科医院、二階は住居となっており、当時のままの様子を見学できる。酒田大火後、酒田市に寄贈され、1980(昭和55)年3月に現在地へ移転、市指定文化財として保存されている。

■旧白崎医院(きゅうしらさきいいん)
●住所/山形県酒田市南新町1-6-13
●駐車場/日和山公園駐車場利用
●開館時間/月・金・土・日曜日の9:00~16:30
●休館日/火・水・木曜日 12月~3月
●入場料/無料
●問合せ/0234-22-2416
●URL/https://sakata-kankou.com/spot/30111(酒田観光物産協会)
https://shonai-yamagata.com/detail/67/index.html(庄内コンシェルジュ)
https://www.city.sakata.lg.jp/bunka/bunkazai/bunkazaishisetsu/kyuu_shirasaki_iin.html(酒田市役所)



みなとまち酒田を体感する眺望。
日本最古の木造灯台がシンボルの日和山公園。
     
 公園周辺をぐるりと一周する形で日和山公園に戻ってきた。実はこの場所、日本の都市公園100選、日本の歴史公園100選、さらに日本の夕陽百選にも選ばれている。高台からの眺望は、酒田市街、酒田港、日本海、最上川、出羽三山を一望できて素晴らしい。

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 公園のシンボルとも言える西洋式の白い六角形の灯台は、日本最古の木造灯台と言われている。園内には、ほかにも1/2スケールで再現された北前船や、酒田を訪れた文人墨客を紹介した29基もの文学碑が点在する。

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 今回の旅はこの気持ちの良い公園にて終了だが、全体に駆け足で巡った感がぬぐえない。いずれまたゆっくり訪れてみたい。それにしても庄内の旅は奥が深いといつもながらに思う次第だ。

■日和山公(ひよりやまこうえん)
●住所/酒田市本町二丁目2-45
●駐車場/あり
●問合せ/0234-26-5759(酒田市役所 地域創生部 交流観光課 観光戦略係)
●URL/https://www.city.sakata.lg.jp/sangyo/kanko/rejyashisetsu/hiyoriyamakouen.html(酒田市役所)
    https://shonai-yamagata.com/tourism-leisure/hiyoriyamakouen/index.html(庄内コンシェルジュ)


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posted by 庄内あるく at 00:00日記

4月 蝉しぐれ巡礼、藤沢周平の「海坂藩」を歩く

藤沢周平が描く歴史小説の舞台。
城下町鶴岡に「海坂藩」の面影を求めて。

2022年4月某日

 鶴岡出身の歴史小説家・藤沢周平の作品には、しばしば「海坂藩」という、地方の小藩の名が登場する。この「海坂藩」を物語の舞台とするのが、いわゆる「海坂もの」と言われる作品群だ。

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 「海坂もの」の代表的な長編作品に「蝉しぐれ」がある。「海坂藩」自体は架空の設定だが、そのモチーフとなったのが、藤沢周平の出身地・鶴岡と、酒井氏が治めた庄内藩だと言われている。

  藤沢作品はTVドラマを含め映像化された作品が多いが、本人は必ずしも映像化に積極的ではなかったらしい。映画作品においては全て没後に制作されているが、「蝉しぐれ」は生前に映画化を許可していたものだという。

79松ヶ岡開墾記念館☆DSC04229.JPG09旧藩校致道館☆DSC03739.JPG
23般若寺☆DSC03670.JPG12旧藩校致道館☆DSC03787.JPG
 いずれの作品も世界観、ことに映像美が高く評価されている。ここ庄内でも多くの場所が映画のロケ地として選ばれ、物語の世界観を構成している。

 今回の旅では主に「蝉しぐれ」ゆかりの場所に注目し、主人公・庄内藩士の牧文四郎が物語の中で生きた「海坂藩」を感じながら鶴岡を巡ってみたい。



入部400年、酒井氏の居城「鶴ヶ岡城」城址。
今に残されたお堀に映る爛漫の桜、鶴岡公園。

 時は春爛漫。「蝉しぐれ」の季節ではないのだが、まずは「鶴岡公園」に向かう。ここはかつての庄内藩主の居城「鶴ケ岡城」の城址である。園内には730本もの桜が植えられ、桜の名所にもなっている。

 江戸時代の初頭から幕末まで庄内藩主をつとめたのが酒井氏だ。ちょうど今年2022年は酒井氏入部400年の節目にあたる。そしてこの「鶴ケ岡城」が海坂藩のお城のモデルとされる。

02鶴ヶ城公園☆DSC03812.JPG01鶴ヶ城公園☆DSC03804.JPG
 新政府の城郭取り壊し令によって城の建築物は全て解体されたが、明治9(1876)年に堀や石垣、土塁などを残して公園となった。周辺には歴史的な建造物も点在しており、城下町の風情を今に伝えている。

■鶴岡公園(鶴ケ岡城址公園)(つるおかこうえん/つるがおかじょうしこうえん)
●住所/山形県鶴岡市馬場町4
●駐車場/あり
●定休日/無休
●問合せ/0235-335-1301(鶴岡市観光物産課)
●URL/https://www.tsuruokakanko.com (つるおか観光ナビ)
          https://mokkedano.net/spot/30268 (庄内観光サイト)


 公園内にある庄内神社は、明治10(1877)年に本丸跡に創建されたもの。酒井家の4人の先祖が御祭神として祀られている。明治に時代が移ってもなお酒井家の歴代藩主を慕う旧領内の人々の創意によるものだという。

03鶴岡公園護国神社☆DSC03827.JPG
 庄内神社の横には鶴岡護国神社が並ぶ。明治28(1895)年に旧庄内藩主酒井忠胤が発起人となり創建。拝殿は江戸時代に造営された庄内藩10代藩主酒井忠器の御霊屋を移築したもの。

 戊辰・西南戦争で殉じた藩士を祀ったのが始まりで、その後も諸外国との戦いに殉じた方々を英霊として祀っている。

04鶴岡公園庄内神社☆DSC06158.JPG04鶴岡公園庄内神社☆DSC03850.JPG

■庄内神社・鶴岡園護国神社(しょうないじんしゃ・つつおかごこくじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市馬場町4-1(鶴ヶ岡城址鎮座)
●駐車場/あり(鶴岡公園駐車場)
●拝観料/無料
●授与品頒布/8:30-17:00
●宝物殿開館時間/9:00〜16:30(無料)
●問合せ/0235-22-8100(庄内神社)
●URL/http://jinjahan.com (庄内神社公式サイト)



城跡の公園内に佇む藤沢周平記念館。
その人物や作品を深く知る。

 庄内神社の向かい側に位置するのが藤沢周平記念館だ。東京にあった自宅書斎を移築・再現。自筆原稿や創作資料、愛用品などを展示しながら藤沢周平の作品や生涯を紹介しており、藤沢ファンの聖地とも言われる。平成22(2010)年4月に開館。

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 この日は企画展として「酒井家入部400年、藤沢周平が描いた庄内藩展」が開催されていた。海坂藩のモデルが庄内藩であることを裏付けるような自筆の書き込みや資料などがあり、興味深い。館内は撮影禁止だが、ロビーに掲出されていた「海坂藩」マップは撮影を許された。

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鶴岡市立藤沢周平記念館(つるおかしりつ ふじさわしゅうへいきねんかん)
●住所/山形県鶴岡市馬場町4-6(鶴岡公園内)
●駐車場/あり(鶴岡公園駐車場)
●休館日/水曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始
●入館時間/8:30-17:00
●入館料/大人 320円  高校生・大学生 200円  中学生以下 無料
●問合せ/0235-29-1880(藤沢周平記念館)
●URL/https://www.city.tsuruoka.lg.jp/fujisawa_shuhei_memorial_museum/
        (藤沢周平記念館公式サイト)



東北に現存する唯一の藩校建造物。
個性と自主性を重んじる学風は今に続く。

 致道館は、文化2年(1805)酒井家9代目・忠徳公が創設した庄内藩の藩校だ。「蝉しぐれ」では「三省館」という名で海坂藩の藩校が登場するが、この致道館がモデルと言われる。

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 致道館の建物は、現在は聖廟、講堂、御入間、表御門などが残されており、東北地方に現存する唯一の藩校建造物として国指定史跡となっている。展示物には論語の漢字で人物が描かれている孔子像などがあり、見ごたえもかなりのものだ。

16旧藩校致道館☆DSC03711.JPG10旧藩校致道館☆DSC03749.JPG13旧藩校致道館☆DSC03777.JPG11旧藩校致道館☆DSC03755.JPG
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 文化13年(1816)酒井家10代目・忠器によって鶴ヶ岡城三の丸内に位置する現在地へ移された。江戸時代、藩校の教学は幕府の方針によって朱子学が主流だった中、庄内藩は荻生徂徠の提唱する徂徠学を教学とした。

 致道館では、自主性を重んじ個性に応じた長所を伸ばすことを主眼としたが、この教育方針は、廃校まで堅持され、今なお市の教育の根幹をなしているという。
  
庄内藩校致道館(きゅうしょうないはんこう ちどうかん)
●住所/山形県鶴岡市馬場町11-45
●駐車場/あり
●休館日/水曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12/29〜1/3)
●入館時間/9:00~16:30
●入館料/無料  
●問合せ/0235-23-4672(致道館管理事務室)
    0235-57-4868(鶴岡市教育委員会社会教育課)
●URL/https://www.chido.jp/chidokan/ (庄内藩校致道館公式サイト)
          https://www.tsuruokakanko.com/spot/306 (つるおか観光ナビ)
          https://mokkedano.net/spot/30262 (庄内観光サイト)



城の北東に位置し鬼門を封ずる龍覚寺。
藤沢作品にも登場する般若寺。

 鶴岡公園から北東(鬼門)の方角に車で5分ほどで龍覚寺、そこからさらに徒歩で約5分のところに般若寺がある。

 北東の方角は艮(うしとら=丑と寅の間)といい、陰陽道では陰悪の気が集まり鬼が出入りする鬼門とされる。日本の城下町にはその鬼門を封じるための寺社が置かれてきた。

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 龍覚寺の起源は830年前。城の鬼門に位置することから酒井家の祈願所に指定され、厄払い、火伏せ、極楽往生など幅広いご利益があるという。

 「蝉しぐれ」の「龍興寺」のモデルと言われており、ここで文四郎は敬愛する父と今生の別れをする。庄内三十三観音・第28番札所にもなっている。

■新山 龍覚寺(しんざん りゅうかくじ)
●住所/山形県鶴岡市泉町1-13
●駐車場/あり(15台)
●問合せ/0235-24-2033(龍覚寺)
●URL/https://yamagatakanko.com/attractions/detail_11840.html (山形県公観光サイト)
          http://www.yunohamaonsen.com/?p=1137 (湯野浜温泉観光協会)
          http://syounai33.sakura.ne.jp/index.html (庄内札所三十三霊場 公式HP)
          https://tohoku36fudo.jp/acala05/ (東北三十六不動尊)


22般若寺☆DSC03664.JPG24般若寺☆DSC03691.JPG
 般若寺の創建は平安時代後期にさかのぼる。平泉の藤原秀衡が父基衡の菩提を弔う為、堂宇を建立したのが始まりとされる。藤沢作品『用心棒日月抄・凶刃』の冒頭にこの寺の名が登場する。

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■般若寺(はんにゃじ)
●住所/山形県鶴岡市日吉町9-47
●駐車場/あり
●問合せ/0235-23-7563(般若寺)
●URL/https://www.tsuruokakanko.com(鶴岡観光ナビ)



海坂藩・五間川のモデル。
鶴岡市街地をゆっくり流れる内川。

 鶴岡公園の大きな鳥居を出てまっすぐ歩いて約5分。朱塗りの橋「三雪橋」につきあたる。鶴岡の市街地を緩やかに流れる内川は、かつて鶴ケ岡城の外堀としての役割も担っていた。この内川が「海坂もの」に登場する「五間川」だと言われる。

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19三雪橋☆DSC03916.JPG18三雪橋☆DSC03896.JPG
 橋の付近から鳥海山、月山、金峰山の三つの雪山を望んだことが「三雪橋」の名の由来だとか。赤い欄干、川岸に連なる桜とそれを移す川面、遠くに見える山々とのバランスが絶妙だ。橋の近くには、明治時代に生きた鶴岡出身の女流作家・田澤稲船の銅像が建つ。

■三雪橋(みゆきばし)
●住所/山形県鶴岡市本町1丁目9−1
●駐車場/なし
●問合せ/0235-25-2111(鶴岡市観光物産課)
●URL/http://location-shonai.com/library/T00542/index.html (庄内ロケ地データベース)
     https://yamagatakanko.com/attractions/detail_8912.html (山形県公式観光サイト)
     https://mokkedano.net/spot/41596 (庄内観光サイト)


 内川は鶴岡の市街地をコの字状に流れている。コの字のちょうど中間ほどに、筬橋(おさばし)という小さな石橋がある。内川はそれほど大きな川ではないが、三雪橋より上流にあたるこの付近ではさらに川幅は狭い。

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 筬橋ほとりの筬橋児童公園には藤沢周平の案内板が設置されている。その説明文に、川舟で逃避するさなか「あやめ橋を知っているか」と文四郎がお福に聞く場面が引用されている。

 そのシーンがこの場所でのことなのかどうかはわからなかったが、小さな川にかかる素朴な石橋と川にせり出すように咲く桜の風情には、どこか懐かしさが感じられる。 

■五間川案内板(ごけんがわあんないばん)
●住所/山形県鶴岡市美原町5−61(筬橋児童公園)
●駐車場/なし
●URL/https://www.yamagata-np.jp/bridge/bridge_detail_r.php?river=uchikawa&num=4 (山形新聞)



卯月の湯野浜海岸を和モダンのお部屋から。
寄せる波に「蝉しぐれ」最終章を重ね見る。

 「蝉しぐれ」の最終章の舞台となるのが「蓑浦の湯宿」だ。湯野浜温泉がモデルとなったと言われる。蓑浦は湯治で人気の湯場だが、小説に描かれている季節は真夏。今でこそ夏は海水浴シーズンで、浜には人があふれるが、江戸時代では逆に湯治の閑散期にあたる。そのため小説の中では人影もほとんどない。

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 いつものように「いさごや」に宿をとった。窓の外に広がる春の海景色に、季節は違えど同じような波打際を主人公たちも見ただろうか、と思いを巡らせてみる。日本海は季節によって驚くほどに表情が変わるが、麗らかなこの日はことに穏やかに見える。

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37☆DSC06196_chl.jpg40☆DSC06328.JPG
 話モダンなつくりのお部屋はリニューアルオープンしたばかりの和洋室。おしゃれなつくりに連れのテンションもあがる。こちらのお部屋は「和風ツインルーム10帖タイプ」。他に12.5帖タイプもあるとのこと。

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47☆DSC06453_chl.jpg36☆DSC06566_chl.jpg
 庭園の桜も花盛り。ライトアップされた灯にほのかに浮かび上がる夜桜は雰囲気よし。ラウンジから見るもよし。フロント前には少し季節を先取りした武者飾りのしつらい。

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 夕食前に貸切露天風呂へ。残念ながらこの日の夕刻は雲が多くて夕日は見られなかったが、やはりこのラグジュアリー感あふれる空間は格別だ。すでに「いさごや」滞在時の定番となっている贅沢なひとときである。

貸切露天風呂「ハイプライベートSPA 漣」
●スタンダードプラン45分間/3,300円(税込)
●プレミアムプラン45分間/5,500円(税込)
※要予約

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 今回の夕食は「庄内浜海席」。卯月の庄内の旬をいただくお献立だ。料亭「白沙」の一室にて。食前酒は見た目も味も美しい苺酒。前菜には旬のホタルイカや蕗、くるみ豆腐、兜の器に入った鮟鱇の煮こごりなど。

 お造りはイシモチ、ソイ、タチウオ、エビ、そして尾頭付きのアカチカメキントキ!鮮やかな見栄えもさることながら、シコシコとした食感でクセもくさみもなく、なにしろ旨い。とにかく美味い。その一言。

 今宵選んだ地酒は、すっきりしながらもコクのある「大山 純米吟醸 庄内藩」と、甘口でフルーティーな「くどき上手 純米大吟醸 しぼりたて無濾過生原酒」の2種。お料理にもぴったり。

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 続いては、アブラがのったノドグロの塩焼き、幻と称されるガサ海老と春を告げる桜鱒とのアクアパッツァ、最高に美味な日本海の恵みがとりどり並ぶ贅沢。

 春の山菜と山形牛のしゃぶしゃぶも絶品。綺麗にサシが入った肉の甘味をポン酢でさっぱりと。山菜は、たけのこ、うるい、かたくりの花、さらには赤こごみも。庄内の山の恵みに感謝。

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 客前料理はアワビ踊り焼き。焼きたてあつあつの上にバターをのせてじわじわ溶けたところにレモンを絞る。この柔らかさ、この旨味。何度いただいても感動しかない。

 お食事は孟宗の筍飯に蛤の潮汁。これまた海山の幸のコラボ。お味は言うまでもなし。しめくくりは米麹の甘酒のみつまめ風のデザート。滋味深い優しい甘さが嬉しい。

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41☆DSC07297.JPG42☆DSC07242.JPG42☆DSC03993.JPG
 翌朝、日の出とともに大浴場へ。大浴場は夜と朝で男女入れ替えとなる。この朝は「展望風呂 吟水の湯」が殿方、「庭園風呂 月水の湯」がご婦人。

 日本海を展望する吟水の湯は、のびのびとした抜け感がここちよい。檜のぬくもりに包まれる月水の湯には、夜は星明かりが、朝は陽光が優しく降り注ぐ。

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 海の見える料亭でいただく朝食の献立は「卯月の朝」。卓上で温める味噌汁の具材にはあおさ。春の磯の香が広がる。本日も良い日和だ。

 ラウンジで出立前の一服。連れのオーダーは「山形産ラフランスのクリームソーダ」(600円)。当方は「鳥海山氷河水・水出し珈琲」(550円)で気を整える。

■游水亭 いさごや(ゆうすいてい いさごや
●住所/山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
●泉質/ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含塩化土類食塩泉)
●駐車場/あり
●問合せ/0235-75-2211
●URL/http://www.isagoya.com/(公式)



温泉街をそっと見守りながら
湯野浜海岸を望む高台におわす守り神様。

 
 いつもは宿の海側にばかり目がいくが、今回は山側の高台に咲く桜も気になった。いさごやの裏手には、湯野浜温泉の足湯と飲泉所があり、いさごや駐車場からここに抜ける小道がある。足湯の前には湯野浜温泉の周辺マップと藤沢周平の案内板も。

 マップの案内に従って、高台の方にあるらしい満光稲荷神社を目指してみることにした。民家の間の坂道を抜けていくと満光稲荷神社への矢印案内があった。緩やかな坂道はやがて石段の参道に変わり、赤い鳥居が見えてきた。

28湯野浜満光稲荷神社☆DSC04002.JPG29湯野浜満光稲荷神社☆DSC04059.JPG30湯野浜満光稲荷神社☆DSC04069.JPG
 創建は江戸時代後期の天保年間(1831~1843年)と伝わるが、昭和35(1960)年にこの地に遷座したとのこと。参道に連なる大小の鳥居と朱色に塗られた燈籠が印象的。そして、お社を守るお狐様のなんとキュートなこと!ちょっとしたおとぎの世界だ。

■湯野浜満光稲荷神社(ゆのはままんこういなりじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市湯野浜字稲荷幡100番(琴平神社境内内)
●問合せ/0235-75-2258(湯野浜温泉観光協会)
●URL/http://www.yunohamaonsen.com/?p=263 (湯野浜温泉観光協会)


 同じ敷地内に、海に向かって立つ鳥居を発見。周囲はひらけていて、眼下に湯野浜の温泉街と海岸を一望できる。これは絶景!「いさごや」も眼下だ。案内によれば、ここは金比羅神社(琴平神社とも)の敷地で、先ほどの満光稲荷神社の場所も金比羅(琴平)神社の境内になるのだとか。

31湯野浜金毘羅神社☆DSC04042.JPG32湯野浜金毘羅神社☆DSC04079.JPG
33湯野浜☆DSC04020_edited-1.jpg34湯野浜☆DSC04103.JPG
 金比羅(琴平)神社は古くから。海上守護の神として漁師たちの間で信仰されてきた。創建は天保13(1842)年、この地の漁師たちが、四国へこんぴら参りをした際に分霊を勧請したのが始まりとされている。明治39(1906)年には、日露戦争の戦勝記念として境内が公園として整備されたという。

 境内の片隅に置かれている「桧丸のいかり」には次のようなエピソードが残されている。大正11(1922)年12月、日本海を航行中の桧丸が暴風に遭って座礁、船は大破。しかし湯野浜の地元民の懸命な救助活動により、全乗組員の命は救われた。これも神のご加護だろうか。

■湯野浜金毘羅神社(琴平神社)(ゆのはままこんぴらじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市湯野浜地内
●問合せ/0235-75-2258(湯野浜温泉観光協会)
●URL/http://www.yunohamaonsen.com/?p=248 (湯野浜温泉観光協会)



名園玉川寺の近くに
ひっそりと佇む小さな祠。

 映画「蝉しぐれ」で何度か登場する小さな祠。ふくが祈るシーン、文四郎が切腹させられた父の遺骸を運ぶシーンでも登場する。その玉川の祠のロケ地を訪ねたくて足を運ぶ。近くに玉川寺があるところまではわかっているのだが。

72玉川の祠向かい玉川寺☆DSC04253.JPG71玉川の祠☆DSC04256.JPG
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 玉川寺の庭園は国指定の名勝にも選ばれるほどの名園だが、じっくり訪れるのはまたの機会に譲りたい。ちなみに玉川寺では、藤沢周平の4作品の映画のロケ地にもなっている。

 玉川寺の向かい側の杉木立ちの小道を歩くと、小さな祠があった。映画で見たものとは少し違うようだがこれはこれで風情がある。 

■玉川寺(たまがわてら)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町玉川35
●駐車場/あり
●問合せ/0235-62-2746
●URL/http://kanji.jitenon.jp


印象的な石段と厳かさを讃える杉木立ち。
緊迫感に説得力を与えるロケーション。

 
 雷電神社は、映画「蟬しぐれ」のロケ地のひとつ。主人公の文四郎が親友のために大勢を相手にしてケンカをするシーンが撮影された。また、当地で行われる「高寺八講」が祭りの場面でも使われている。

73雷電神社☆DSC04106.JPG74雷電神社☆DSC07321.JPG76雷電神社☆DSC04165.JPG
75雷電神社☆DSC04117.JPG77雷電神社☆DSC07340.JPG
 雷電神社の創建は不詳だが、古くから神仏習合し高寺山大権現と称されていた。本地仏だった千手観音像は、出羽三山の開祖・蜂子皇子が彫刻したと伝わる。明治時代初頭、神仏分離令により千手観音像は隣接する照光寺に移され、庄内三十三観音の第三十番札所になっている。

 高寺八講は、室町末期ごろから雷電神社に伝わる豊作祈願の舞。「延年」と呼ばれる寺院芸能の色を強く残しており、県の無形民俗文化財に指定されている。

■雷電神社(らいでんじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町高寺字南畑76
●駐車場/あり
●問合せ/0235-62-2111(鶴岡市羽黒庁舎 産業課 観光商工室)



鶴岡シルクの出発点。
桜名所としても知られる松ヶ岡開墾場。

 
 2017年4月「サムライゆかりのシルク」のストーリーが日本遺産に認定され、その中心となっている松ヶ岡開墾場も「松ヶ岡クラフトパーク」として整備が進んでいる。

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 建物はいずれも明治初期の養蚕場の建物を生かした造りになっており、展示場やショップとして活用。また。開墾50年を記念して植えられた桜は100年を超えた大木となって遊歩道を彩り、桜名所として欠かせないスポットとなっている。

00松ヶ岡開墾記念館☆DSC04213.JPG78松ヶ岡開墾記念館☆DSC04183.JPG
 松ヶ岡開墾場は、戊辰戦争で敗れた旧庄内藩士約3,000人が桑畑を開いて養蚕をはじめたことに始まる。「農民から一切の土地を奪わない。米づくりを侵さない。」という武士の矜持を持ち、刀を鍬に変えて郊外の原野を開墾した。

 広さは東京ドーム67個分の約311ヘクタール。解体された鶴岡城を建材として10棟もの蚕室持つ国内最大の蚕室群を建設し、やがて養蚕から絹製品づくりまでを一貫して行える鶴岡の絹産業の原点となった。

■松ヶ岡開墾場(松ヶ岡クラフトパーク)(まつがおかかいこんじょう)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町松ヶ岡25,28,29
●駐車場/あり
●休館日/水曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12/29〜1/3)
●入館時間/9:00~16:00
●入館料/(松ヶ岡開墾記念館)一般 300円  中学生以下 無料 
(シルクミライ館)無料
●問合せ/(松ヶ岡開墾記念館)0235-62-3985
(シルクミライ館)0235-33-8424
●URL/https://tsuruoka-matsugaoka.jp ( MATSUGAOKA CRAFT PARK公式サイト)
https://www.chido.jp/matsugaoka/ (松ヶ岡開墾記念館)
https://www.tsuruokakanko.com/spot/275 (鶴岡観光ナビ)



ワイナリーレストランで
目にも口にも幸せなおしゃれランチ。

 本日のランチはピノ・コッリーナにて。松ヶ岡開墾場にオープンしたレストラン併設のワイナリーだ。外観も店内もおしゃれだが、天気が良いのでテラスでいただくことに。目の前には一面のぶどう畑。遠くには月山を望む最高のロケーションだ。

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 庄内産の食材にこだわったランチは、前菜は二種・メインは三種からそれぞれに選べる。ワインはもちろん、ノンアルコールワインも種類が豊富。

 せっかくなので「ディアムール ミュスカ ノンアルコール スパークリング」と「プティ エトワレ ノンアルコール カベルネ ソーヴィニヨン」をオーダーしてみた。ノンアルコールといえど、ワイン用ぶどうを使った本格派だ。

83ピノ・コッリーナ☆DSC07380.JPG84ピノ・コッリーナ☆DSC07385.JPG85ピノ・コッリーナ☆DSC07394.JPG86ピノ・コッリーナ☆DSC07405.JPG 
 庄内柿の主要な産地でもある松ケ岡は、ぶどう造りにも適しているという。松ケ岡産「日本ワイン」は、平成29(2017)年から定植し、令和2(2020)年より醸造を開始したばかりだが、国際ワインコンペティション・サクラアワードにも入賞する実力を持つ。ぜひ味わってみたかったのだが、在庫切れだった。残念。

■ピノ・コッリーナ / ファームガーデン&ワイナリー松ケ岡
●住所/山形県鶴岡市羽黒町松ケ岡字松ケ岡156-2
●駐車場/あり
●定休日/年末年始・冬季(1~2月)休業あり
●営業時間/10:00~17:00
      ランチ 11:00~14:30(ラストオーダー)
      カフェ 14:30~16:00(ラストオーダー)
●問合せ/0235-26-7807
●URL/https://pinocollina.com (公式サイト)
https://mokkedano.net/spot/41738 (庄内館恋サイト)



物語の主人公たちの心に触れる
どこか懐かしいような原風景。

 
 赤川は庄内平野を南から北へと流れて日本海へと注ぐ。鶴岡の市街地を流れる内川も赤川の支流にあたる。この赤川沿いの大ケヤキが主人公文四郎と親友たちとの相談場所のロケ地となった。

 大ケヤキが相談場所だというのは映画独自の設定ではあるが、物語の世界観をより鮮明にする視覚的効果を生む。そういったことも映像化の醍醐味なのかもしれない。

89赤川の大ケヤキ☆DSC07448.JPG88赤川の大ケヤキ☆DSC07458.JPG
 場所も目印もわかりづらいうえ、近隣には駐車場もなく路駐もできない場所なので、たどり着くまで少々難儀はしたものの、よくこの場所をロケ地として見つけたものだと感心する。
 
 ゆったりとカーブしながら流れる川、遠くに連なる山々、どっしり根を下ろし、何年もかけて成長し、天に枝を広げる大ケヤキ。心を洗われるような、懐かしさに引かれるような、おおらかさに包まれるような、なんともいえない景色だ。


 余韻を残しながら今回の旅はここで終了となる。海坂藩の面影を求めて足早に巡った二日間だったが、まだまだ出会いたい風景があるので、再び計画してみたい。

■赤川沿の大ケヤキ(あかがわのおおけやき)
●住所/山形県鶴岡市東岩本沖田
●URL/https://www.yamagata-np.jp/feature/fujisawa_sekai/kj_2017060800154.php (山形新聞)



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