4月 蝉しぐれ巡礼、藤沢周平の「海坂藩」を歩く

藤沢周平が描く歴史小説の舞台。
城下町鶴岡に「海坂藩」の面影を求めて。

2022年4月某日

 鶴岡出身の歴史小説家・藤沢周平の作品には、しばしば「海坂藩」という、地方の小藩の名が登場する。この「海坂藩」を物語の舞台とするのが、いわゆる「海坂もの」と言われる作品群だ。

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 「海坂もの」の代表的な長編作品に「蝉しぐれ」がある。「海坂藩」自体は架空の設定だが、そのモチーフとなったのが、藤沢周平の出身地・鶴岡と、酒井氏が治めた庄内藩だと言われている。

  藤沢作品はTVドラマを含め映像化された作品が多いが、本人は必ずしも映像化に積極的ではなかったらしい。映画作品においては全て没後に制作されているが、「蝉しぐれ」は生前に映画化を許可していたものだという。

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23般若寺☆DSC03670.JPG12旧藩校致道館☆DSC03787.JPG
 いずれの作品も世界観、ことに映像美が高く評価されている。ここ庄内でも多くの場所が映画のロケ地として選ばれ、物語の世界観を構成している。

 今回の旅では主に「蝉しぐれ」ゆかりの場所に注目し、主人公・庄内藩士の牧文四郎が物語の中で生きた「海坂藩」を感じながら鶴岡を巡ってみたい。



入部400年、酒井氏の居城「鶴ヶ岡城」城址。
今に残されたお堀に映る爛漫の桜、鶴岡公園。

 時は春爛漫。「蝉しぐれ」の季節ではないのだが、まずは「鶴岡公園」に向かう。ここはかつての庄内藩主の居城「鶴ケ岡城」の城址である。園内には730本もの桜が植えられ、桜の名所にもなっている。

 江戸時代の初頭から幕末まで庄内藩主をつとめたのが酒井氏だ。ちょうど今年2022年は酒井氏入部400年の節目にあたる。そしてこの「鶴ケ岡城」が海坂藩のお城のモデルとされる。

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 新政府の城郭取り壊し令によって城の建築物は全て解体されたが、明治9(1876)年に堀や石垣、土塁などを残して公園となった。周辺には歴史的な建造物も点在しており、城下町の風情を今に伝えている。

■鶴岡公園(鶴ケ岡城址公園)(つるおかこうえん/つるがおかじょうしこうえん)
●住所/山形県鶴岡市馬場町4
●駐車場/あり
●定休日/無休
●問合せ/0235-335-1301(鶴岡市観光物産課)
●URL/https://www.tsuruokakanko.com (つるおか観光ナビ)
          https://mokkedano.net/spot/30268 (庄内観光サイト)


 公園内にある庄内神社は、明治10(1877)年に本丸跡に創建されたもの。酒井家の4人の先祖が御祭神として祀られている。明治に時代が移ってもなお酒井家の歴代藩主を慕う旧領内の人々の創意によるものだという。

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 庄内神社の横には鶴岡護国神社が並ぶ。明治28(1895)年に旧庄内藩主酒井忠胤が発起人となり創建。拝殿は江戸時代に造営された庄内藩10代藩主酒井忠器の御霊屋を移築したもの。

 戊辰・西南戦争で殉じた藩士を祀ったのが始まりで、その後も諸外国との戦いに殉じた方々を英霊として祀っている。

04鶴岡公園庄内神社☆DSC06158.JPG04鶴岡公園庄内神社☆DSC03850.JPG

■庄内神社・鶴岡園護国神社(しょうないじんしゃ・つつおかごこくじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市馬場町4-1(鶴ヶ岡城址鎮座)
●駐車場/あり(鶴岡公園駐車場)
●拝観料/無料
●授与品頒布/8:30-17:00
●宝物殿開館時間/9:00〜16:30(無料)
●問合せ/0235-22-8100(庄内神社)
●URL/http://jinjahan.com (庄内神社公式サイト)



城跡の公園内に佇む藤沢周平記念館。
その人物や作品を深く知る。

 庄内神社の向かい側に位置するのが藤沢周平記念館だ。東京にあった自宅書斎を移築・再現。自筆原稿や創作資料、愛用品などを展示しながら藤沢周平の作品や生涯を紹介しており、藤沢ファンの聖地とも言われる。平成22(2010)年4月に開館。

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 この日は企画展として「酒井家入部400年、藤沢周平が描いた庄内藩展」が開催されていた。海坂藩のモデルが庄内藩であることを裏付けるような自筆の書き込みや資料などがあり、興味深い。館内は撮影禁止だが、ロビーに掲出されていた「海坂藩」マップは撮影を許された。

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鶴岡市立藤沢周平記念館(つるおかしりつ ふじさわしゅうへいきねんかん)
●住所/山形県鶴岡市馬場町4-6(鶴岡公園内)
●駐車場/あり(鶴岡公園駐車場)
●休館日/水曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始
●入館時間/8:30-17:00
●入館料/大人 320円  高校生・大学生 200円  中学生以下 無料
●問合せ/0235-29-1880(藤沢周平記念館)
●URL/https://www.city.tsuruoka.lg.jp/fujisawa_shuhei_memorial_museum/
        (藤沢周平記念館公式サイト)



東北に現存する唯一の藩校建造物。
個性と自主性を重んじる学風は今に続く。

 致道館は、文化2年(1805)酒井家9代目・忠徳公が創設した庄内藩の藩校だ。「蝉しぐれ」では「三省館」という名で海坂藩の藩校が登場するが、この致道館がモデルと言われる。

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 致道館の建物は、現在は聖廟、講堂、御入間、表御門などが残されており、東北地方に現存する唯一の藩校建造物として国指定史跡となっている。展示物には論語の漢字で人物が描かれている孔子像などがあり、見ごたえもかなりのものだ。

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 文化13年(1816)酒井家10代目・忠器によって鶴ヶ岡城三の丸内に位置する現在地へ移された。江戸時代、藩校の教学は幕府の方針によって朱子学が主流だった中、庄内藩は荻生徂徠の提唱する徂徠学を教学とした。

 致道館では、自主性を重んじ個性に応じた長所を伸ばすことを主眼としたが、この教育方針は、廃校まで堅持され、今なお市の教育の根幹をなしているという。
  
庄内藩校致道館(きゅうしょうないはんこう ちどうかん)
●住所/山形県鶴岡市馬場町11-45
●駐車場/あり
●休館日/水曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12/29〜1/3)
●入館時間/9:00~16:30
●入館料/無料  
●問合せ/0235-23-4672(致道館管理事務室)
    0235-57-4868(鶴岡市教育委員会社会教育課)
●URL/https://www.chido.jp/chidokan/ (庄内藩校致道館公式サイト)
          https://www.tsuruokakanko.com/spot/306 (つるおか観光ナビ)
          https://mokkedano.net/spot/30262 (庄内観光サイト)



城の北東に位置し鬼門を封ずる龍覚寺。
藤沢作品にも登場する般若寺。

 鶴岡公園から北東(鬼門)の方角に車で5分ほどで龍覚寺、そこからさらに徒歩で約5分のところに般若寺がある。

 北東の方角は艮(うしとら=丑と寅の間)といい、陰陽道では陰悪の気が集まり鬼が出入りする鬼門とされる。日本の城下町にはその鬼門を封じるための寺社が置かれてきた。

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 龍覚寺の起源は830年前。城の鬼門に位置することから酒井家の祈願所に指定され、厄払い、火伏せ、極楽往生など幅広いご利益があるという。

 「蝉しぐれ」の「龍興寺」のモデルと言われており、ここで文四郎は敬愛する父と今生の別れをする。庄内三十三観音・第28番札所にもなっている。

■新山 龍覚寺(しんざん りゅうかくじ)
●住所/山形県鶴岡市泉町1-13
●駐車場/あり(15台)
●問合せ/0235-24-2033(龍覚寺)
●URL/https://yamagatakanko.com/attractions/detail_11840.html (山形県公観光サイト)
          http://www.yunohamaonsen.com/?p=1137 (湯野浜温泉観光協会)
          http://syounai33.sakura.ne.jp/index.html (庄内札所三十三霊場 公式HP)
          https://tohoku36fudo.jp/acala05/ (東北三十六不動尊)


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 般若寺の創建は平安時代後期にさかのぼる。平泉の藤原秀衡が父基衡の菩提を弔う為、堂宇を建立したのが始まりとされる。藤沢作品『用心棒日月抄・凶刃』の冒頭にこの寺の名が登場する。

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■般若寺(はんにゃじ)
●住所/山形県鶴岡市日吉町9-47
●駐車場/あり
●問合せ/0235-23-7563(般若寺)
●URL/https://www.tsuruokakanko.com(鶴岡観光ナビ)



海坂藩・五間川のモデル。
鶴岡市街地をゆっくり流れる内川。

 鶴岡公園の大きな鳥居を出てまっすぐ歩いて約5分。朱塗りの橋「三雪橋」につきあたる。鶴岡の市街地を緩やかに流れる内川は、かつて鶴ケ岡城の外堀としての役割も担っていた。この内川が「海坂もの」に登場する「五間川」だと言われる。

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 橋の付近から鳥海山、月山、金峰山の三つの雪山を望んだことが「三雪橋」の名の由来だとか。赤い欄干、川岸に連なる桜とそれを移す川面、遠くに見える山々とのバランスが絶妙だ。橋の近くには、明治時代に生きた鶴岡出身の女流作家・田澤稲船の銅像が建つ。

■三雪橋(みゆきばし)
●住所/山形県鶴岡市本町1丁目9−1
●駐車場/なし
●問合せ/0235-25-2111(鶴岡市観光物産課)
●URL/http://location-shonai.com/library/T00542/index.html (庄内ロケ地データベース)
     https://yamagatakanko.com/attractions/detail_8912.html (山形県公式観光サイト)
     https://mokkedano.net/spot/41596 (庄内観光サイト)


 内川は鶴岡の市街地をコの字状に流れている。コの字のちょうど中間ほどに、筬橋(おさばし)という小さな石橋がある。内川はそれほど大きな川ではないが、三雪橋より上流にあたるこの付近ではさらに川幅は狭い。

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 筬橋ほとりの筬橋児童公園には藤沢周平の案内板が設置されている。その説明文に、川舟で逃避するさなか「あやめ橋を知っているか」と文四郎がお福に聞く場面が引用されている。

 そのシーンがこの場所でのことなのかどうかはわからなかったが、小さな川にかかる素朴な石橋と川にせり出すように咲く桜の風情には、どこか懐かしさが感じられる。 

■五間川案内板(ごけんがわあんないばん)
●住所/山形県鶴岡市美原町5−61(筬橋児童公園)
●駐車場/なし
●URL/https://www.yamagata-np.jp/bridge/bridge_detail_r.php?river=uchikawa&num=4 (山形新聞)



卯月の湯野浜海岸を和モダンのお部屋から。
寄せる波に「蝉しぐれ」最終章を重ね見る。

 「蝉しぐれ」の最終章の舞台となるのが「蓑浦の湯宿」だ。湯野浜温泉がモデルとなったと言われる。蓑浦は湯治で人気の湯場だが、小説に描かれている季節は真夏。今でこそ夏は海水浴シーズンで、浜には人があふれるが、江戸時代では逆に湯治の閑散期にあたる。そのため小説の中では人影もほとんどない。

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 いつものように「いさごや」に宿をとった。窓の外に広がる春の海景色に、季節は違えど同じような波打際を主人公たちも見ただろうか、と思いを巡らせてみる。日本海は季節によって驚くほどに表情が変わるが、麗らかなこの日はことに穏やかに見える。

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 話モダンなつくりのお部屋はリニューアルオープンしたばかりの和洋室。おしゃれなつくりに連れのテンションもあがる。こちらのお部屋は「和風ツインルーム10帖タイプ」。他に12.5帖タイプもあるとのこと。

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 庭園の桜も花盛り。ライトアップされた灯にほのかに浮かび上がる夜桜は雰囲気よし。ラウンジから見るもよし。フロント前には少し季節を先取りした武者飾りのしつらい。

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 夕食前に貸切露天風呂へ。残念ながらこの日の夕刻は雲が多くて夕日は見られなかったが、やはりこのラグジュアリー感あふれる空間は格別だ。すでに「いさごや」滞在時の定番となっている贅沢なひとときである。

貸切露天風呂「ハイプライベートSPA 漣」
●スタンダードプラン45分間/3,300円(税込)
●プレミアムプラン45分間/5,500円(税込)
※要予約

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 今回の夕食は「庄内浜海席」。卯月の庄内の旬をいただくお献立だ。料亭「白沙」の一室にて。食前酒は見た目も味も美しい苺酒。前菜には旬のホタルイカや蕗、くるみ豆腐、兜の器に入った鮟鱇の煮こごりなど。

 お造りはイシモチ、ソイ、タチウオ、エビ、そして尾頭付きのアカチカメキントキ!鮮やかな見栄えもさることながら、シコシコとした食感でクセもくさみもなく、なにしろ旨い。とにかく美味い。その一言。

 今宵選んだ地酒は、すっきりしながらもコクのある「大山 純米吟醸 庄内藩」と、甘口でフルーティーな「くどき上手 純米大吟醸 しぼりたて無濾過生原酒」の2種。お料理にもぴったり。

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 続いては、アブラがのったノドグロの塩焼き、幻と称されるガサ海老と春を告げる桜鱒とのアクアパッツァ、最高に美味な日本海の恵みがとりどり並ぶ贅沢。

 春の山菜と山形牛のしゃぶしゃぶも絶品。綺麗にサシが入った肉の甘味をポン酢でさっぱりと。山菜は、たけのこ、うるい、かたくりの花、さらには赤こごみも。庄内の山の恵みに感謝。

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 客前料理はアワビ踊り焼き。焼きたてあつあつの上にバターをのせてじわじわ溶けたところにレモンを絞る。この柔らかさ、この旨味。何度いただいても感動しかない。

 お食事は孟宗の筍飯に蛤の潮汁。これまた海山の幸のコラボ。お味は言うまでもなし。しめくくりは米麹の甘酒のみつまめ風のデザート。滋味深い優しい甘さが嬉しい。

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41☆DSC07297.JPG42☆DSC07242.JPG42☆DSC03993.JPG
 翌朝、日の出とともに大浴場へ。大浴場は夜と朝で男女入れ替えとなる。この朝は「展望風呂 吟水の湯」が殿方、「庭園風呂 月水の湯」がご婦人。

 日本海を展望する吟水の湯は、のびのびとした抜け感がここちよい。檜のぬくもりに包まれる月水の湯には、夜は星明かりが、朝は陽光が優しく降り注ぐ。

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 海の見える料亭でいただく朝食の献立は「卯月の朝」。卓上で温める味噌汁の具材にはあおさ。春の磯の香が広がる。本日も良い日和だ。

 ラウンジで出立前の一服。連れのオーダーは「山形産ラフランスのクリームソーダ」(600円)。当方は「鳥海山氷河水・水出し珈琲」(550円)で気を整える。

■游水亭 いさごや(ゆうすいてい いさごや
●住所/山形県鶴岡市湯野浜1-8-7
●泉質/ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含塩化土類食塩泉)
●駐車場/あり
●問合せ/0235-75-2211
●URL/http://www.isagoya.com/(公式)



温泉街をそっと見守りながら
湯野浜海岸を望む高台におわす守り神様。

 
 いつもは宿の海側にばかり目がいくが、今回は山側の高台に咲く桜も気になった。いさごやの裏手には、湯野浜温泉の足湯と飲泉所があり、いさごや駐車場からここに抜ける小道がある。足湯の前には湯野浜温泉の周辺マップと藤沢周平の案内板も。

 マップの案内に従って、高台の方にあるらしい満光稲荷神社を目指してみることにした。民家の間の坂道を抜けていくと満光稲荷神社への矢印案内があった。緩やかな坂道はやがて石段の参道に変わり、赤い鳥居が見えてきた。

28湯野浜満光稲荷神社☆DSC04002.JPG29湯野浜満光稲荷神社☆DSC04059.JPG30湯野浜満光稲荷神社☆DSC04069.JPG
 創建は江戸時代後期の天保年間(1831~1843年)と伝わるが、昭和35(1960)年にこの地に遷座したとのこと。参道に連なる大小の鳥居と朱色に塗られた燈籠が印象的。そして、お社を守るお狐様のなんとキュートなこと!ちょっとしたおとぎの世界だ。

■湯野浜満光稲荷神社(ゆのはままんこういなりじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市湯野浜字稲荷幡100番(琴平神社境内内)
●問合せ/0235-75-2258(湯野浜温泉観光協会)
●URL/http://www.yunohamaonsen.com/?p=263 (湯野浜温泉観光協会)


 同じ敷地内に、海に向かって立つ鳥居を発見。周囲はひらけていて、眼下に湯野浜の温泉街と海岸を一望できる。これは絶景!「いさごや」も眼下だ。案内によれば、ここは金比羅神社(琴平神社とも)の敷地で、先ほどの満光稲荷神社の場所も金比羅(琴平)神社の境内になるのだとか。

31湯野浜金毘羅神社☆DSC04042.JPG32湯野浜金毘羅神社☆DSC04079.JPG
33湯野浜☆DSC04020_edited-1.jpg34湯野浜☆DSC04103.JPG
 金比羅(琴平)神社は古くから。海上守護の神として漁師たちの間で信仰されてきた。創建は天保13(1842)年、この地の漁師たちが、四国へこんぴら参りをした際に分霊を勧請したのが始まりとされている。明治39(1906)年には、日露戦争の戦勝記念として境内が公園として整備されたという。

 境内の片隅に置かれている「桧丸のいかり」には次のようなエピソードが残されている。大正11(1922)年12月、日本海を航行中の桧丸が暴風に遭って座礁、船は大破。しかし湯野浜の地元民の懸命な救助活動により、全乗組員の命は救われた。これも神のご加護だろうか。

■湯野浜金毘羅神社(琴平神社)(ゆのはままこんぴらじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市湯野浜地内
●問合せ/0235-75-2258(湯野浜温泉観光協会)
●URL/http://www.yunohamaonsen.com/?p=248 (湯野浜温泉観光協会)



名園玉川寺の近くに
ひっそりと佇む小さな祠。

 映画「蝉しぐれ」で何度か登場する小さな祠。ふくが祈るシーン、文四郎が切腹させられた父の遺骸を運ぶシーンでも登場する。その玉川の祠のロケ地を訪ねたくて足を運ぶ。近くに玉川寺があるところまではわかっているのだが。

72玉川の祠向かい玉川寺☆DSC04253.JPG71玉川の祠☆DSC04256.JPG
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 玉川寺の庭園は国指定の名勝にも選ばれるほどの名園だが、じっくり訪れるのはまたの機会に譲りたい。ちなみに玉川寺では、藤沢周平の4作品の映画のロケ地にもなっている。

 玉川寺の向かい側の杉木立ちの小道を歩くと、小さな祠があった。映画で見たものとは少し違うようだがこれはこれで風情がある。 

■玉川寺(たまがわてら)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町玉川35
●駐車場/あり
●問合せ/0235-62-2746
●URL/http://kanji.jitenon.jp


印象的な石段と厳かさを讃える杉木立ち。
緊迫感に説得力を与えるロケーション。

 
 雷電神社は、映画「蟬しぐれ」のロケ地のひとつ。主人公の文四郎が親友のために大勢を相手にしてケンカをするシーンが撮影された。また、当地で行われる「高寺八講」が祭りの場面でも使われている。

73雷電神社☆DSC04106.JPG74雷電神社☆DSC07321.JPG76雷電神社☆DSC04165.JPG
75雷電神社☆DSC04117.JPG77雷電神社☆DSC07340.JPG
 雷電神社の創建は不詳だが、古くから神仏習合し高寺山大権現と称されていた。本地仏だった千手観音像は、出羽三山の開祖・蜂子皇子が彫刻したと伝わる。明治時代初頭、神仏分離令により千手観音像は隣接する照光寺に移され、庄内三十三観音の第三十番札所になっている。

 高寺八講は、室町末期ごろから雷電神社に伝わる豊作祈願の舞。「延年」と呼ばれる寺院芸能の色を強く残しており、県の無形民俗文化財に指定されている。

■雷電神社(らいでんじんじゃ)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町高寺字南畑76
●駐車場/あり
●問合せ/0235-62-2111(鶴岡市羽黒庁舎 産業課 観光商工室)



鶴岡シルクの出発点。
桜名所としても知られる松ヶ岡開墾場。

 
 2017年4月「サムライゆかりのシルク」のストーリーが日本遺産に認定され、その中心となっている松ヶ岡開墾場も「松ヶ岡クラフトパーク」として整備が進んでいる。

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 建物はいずれも明治初期の養蚕場の建物を生かした造りになっており、展示場やショップとして活用。また。開墾50年を記念して植えられた桜は100年を超えた大木となって遊歩道を彩り、桜名所として欠かせないスポットとなっている。

00松ヶ岡開墾記念館☆DSC04213.JPG78松ヶ岡開墾記念館☆DSC04183.JPG
 松ヶ岡開墾場は、戊辰戦争で敗れた旧庄内藩士約3,000人が桑畑を開いて養蚕をはじめたことに始まる。「農民から一切の土地を奪わない。米づくりを侵さない。」という武士の矜持を持ち、刀を鍬に変えて郊外の原野を開墾した。

 広さは東京ドーム67個分の約311ヘクタール。解体された鶴岡城を建材として10棟もの蚕室持つ国内最大の蚕室群を建設し、やがて養蚕から絹製品づくりまでを一貫して行える鶴岡の絹産業の原点となった。

■松ヶ岡開墾場(松ヶ岡クラフトパーク)(まつがおかかいこんじょう)
●住所/山形県鶴岡市羽黒町松ヶ岡25,28,29
●駐車場/あり
●休館日/水曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始(12/29〜1/3)
●入館時間/9:00~16:00
●入館料/(松ヶ岡開墾記念館)一般 300円  中学生以下 無料 
(シルクミライ館)無料
●問合せ/(松ヶ岡開墾記念館)0235-62-3985
(シルクミライ館)0235-33-8424
●URL/https://tsuruoka-matsugaoka.jp ( MATSUGAOKA CRAFT PARK公式サイト)
https://www.chido.jp/matsugaoka/ (松ヶ岡開墾記念館)
https://www.tsuruokakanko.com/spot/275 (鶴岡観光ナビ)



ワイナリーレストランで
目にも口にも幸せなおしゃれランチ。

 本日のランチはピノ・コッリーナにて。松ヶ岡開墾場にオープンしたレストラン併設のワイナリーだ。外観も店内もおしゃれだが、天気が良いのでテラスでいただくことに。目の前には一面のぶどう畑。遠くには月山を望む最高のロケーションだ。

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 庄内産の食材にこだわったランチは、前菜は二種・メインは三種からそれぞれに選べる。ワインはもちろん、ノンアルコールワインも種類が豊富。

 せっかくなので「ディアムール ミュスカ ノンアルコール スパークリング」と「プティ エトワレ ノンアルコール カベルネ ソーヴィニヨン」をオーダーしてみた。ノンアルコールといえど、ワイン用ぶどうを使った本格派だ。

83ピノ・コッリーナ☆DSC07380.JPG84ピノ・コッリーナ☆DSC07385.JPG85ピノ・コッリーナ☆DSC07394.JPG86ピノ・コッリーナ☆DSC07405.JPG 
 庄内柿の主要な産地でもある松ケ岡は、ぶどう造りにも適しているという。松ケ岡産「日本ワイン」は、平成29(2017)年から定植し、令和2(2020)年より醸造を開始したばかりだが、国際ワインコンペティション・サクラアワードにも入賞する実力を持つ。ぜひ味わってみたかったのだが、在庫切れだった。残念。

■ピノ・コッリーナ / ファームガーデン&ワイナリー松ケ岡
●住所/山形県鶴岡市羽黒町松ケ岡字松ケ岡156-2
●駐車場/あり
●定休日/年末年始・冬季(1~2月)休業あり
●営業時間/10:00~17:00
      ランチ 11:00~14:30(ラストオーダー)
      カフェ 14:30~16:00(ラストオーダー)
●問合せ/0235-26-7807
●URL/https://pinocollina.com (公式サイト)
https://mokkedano.net/spot/41738 (庄内館恋サイト)



物語の主人公たちの心に触れる
どこか懐かしいような原風景。

 
 赤川は庄内平野を南から北へと流れて日本海へと注ぐ。鶴岡の市街地を流れる内川も赤川の支流にあたる。この赤川沿いの大ケヤキが主人公文四郎と親友たちとの相談場所のロケ地となった。

 大ケヤキが相談場所だというのは映画独自の設定ではあるが、物語の世界観をより鮮明にする視覚的効果を生む。そういったことも映像化の醍醐味なのかもしれない。

89赤川の大ケヤキ☆DSC07448.JPG88赤川の大ケヤキ☆DSC07458.JPG
 場所も目印もわかりづらいうえ、近隣には駐車場もなく路駐もできない場所なので、たどり着くまで少々難儀はしたものの、よくこの場所をロケ地として見つけたものだと感心する。
 
 ゆったりとカーブしながら流れる川、遠くに連なる山々、どっしり根を下ろし、何年もかけて成長し、天に枝を広げる大ケヤキ。心を洗われるような、懐かしさに引かれるような、おおらかさに包まれるような、なんともいえない景色だ。


 余韻を残しながら今回の旅はここで終了となる。海坂藩の面影を求めて足早に巡った二日間だったが、まだまだ出会いたい風景があるので、再び計画してみたい。

■赤川沿の大ケヤキ(あかがわのおおけやき)
●住所/山形県鶴岡市東岩本沖田
●URL/https://www.yamagata-np.jp/feature/fujisawa_sekai/kj_2017060800154.php (山形新聞)



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