5月 歴史情緒のまち、加茂・大山地区

心癒すクラゲたちの龍宮、
鶴岡が世界に誇る、加茂水族館。

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2017年5月某日
 海月、と書いてクラゲ。クラゲは儚げなその姿から、海に浮かぶ月に例えられた不思議な生き物だ。クラゲの遊泳能力はきわめて弱く、普段は海中の流れに身を任せフワフワと漂いながら生きている。流れが全くなければクラゲは水底に沈んでしまい、這い上がろうと無理に泳ぎ続けると弱って死んでしまうのだという。
 湯野浜から目と鼻の先にある「鶴岡市立加茂水族館」は、そんなクラゲの飼育でも知られている人気スポットだ。常時50種類以上にも及ぶクラゲの展示数は世界一で、ギネスブックにも認定されている。

25荒崎灯台s.jpg01加茂水族館01s.jpg03加茂水族館06s.jpg04加茂水族館08s.jpg
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 “クラゲドリーム館”の愛称で知られる「鶴岡市立加茂水族館」は、加茂港から車で数分、荒埼灯台が建つ日本海に面した岬にある。約87年前、地元有志の出資で誕生した建物は1970年代以降、老朽化とともに入館者数が激減し、一時は閉館の危機に追い込まれた。そんなときに開催した、当時人気の珊瑚の企画展で、偶然にもサカサクラゲの幼生が水槽の中に紛れ込んでいた。これを試しに飼育して展示したところ、大反響。その後、難しいとされるクラゲの繁殖に取り組み、人工水流をつくる専用水槽を開発。2014年には建物も全面リニューアルし、現在、休日には長蛇の列も出来る国内屈指の人気水族館となっている。
 入口で連れと2人分の入館料(大人1人 1,000円)を支払い早速、中へ。地域の生涯学習施設も兼ねた水族館は、入口からしばらくは庄内の海や川に生息する生物の紹介コーナーが続く。中には、直に手で触ることのできるふれあい水槽もある。
 やがて暗がりの中に現れたクラゲ展示室、通称“クラネタリウム”は、ガラス細工のようなクラゲたちが、妖しげな光とともに悠々と舞い踊る幻想世界。その姿はまるで宇宙空間をゆくスペースシップを思わせる(笑)。ちなみに、クラゲの明滅する姿を見ることのできる水族館は実は少なく、これも「加茂水族館」ならではの高い繁殖技術と飼育努力の賜物だという。展示の最大の目玉は、世界初の直径約5mの大型クラゲ水槽、クラゲドリームシアター。約2,000匹ものミズクラゲが流れに身を任せ渦巻く姿は、まさに圧巻。海の万華鏡だ。見上げているうちに、自分も原始生命のひとつぶとなって水中を彷徨うような、不思議な心地よさに包まれてゆく。
 館内にはこの他、コラーゲンたっぷりのクラゲ料理が味わえるレストランや、クラゲの給餌、およびライフサイクルを紹介する解説コーナー、子供達に大人気のアシカショーステージもある。芝生が植栽された屋上テラスは、鳥海山と日本海に沈む美しい夕陽が楽しめる絶景スポットだ。

26加茂海より02s.jpg79美好食堂01s.jpg78美好食堂02s.jpg
52加茂路地06s.jpg45熊野神社01s.jpg48船印入り船蔵01s.jpg75秋野邸01s.jpg
66尾形家別館聴濤館01s.jpg57少林寺界隈s.jpg58少林寺02s.jpg61少林寺01s.jpg73共同井戸02s.jpg
65土蔵の通気口02s.jpg28加茂まつり02s.jpg31加茂まつり05s.jpg33淨禅寺02s.jpg38淨禅寺10s.jpg

酒田に次ぐ商港の歴史。
情緒佇む港町、加茂をあるく。

 ところで、三方を山に囲まれ天然の良港として栄えた加茂港は江戸時代、北前船の中継地で酒田に次ぐ海上交通の要衝だった。庄内で名を馳せた富豪5名のうち、3名が加茂に居たという。羽越線開通後、商港としての役割を終えた今も、町並みには華やかな時代の面影を残す遺構や古い寺社が点在している。その風情をぶらり訪ねようと、まずは地元の常連さん行きつけの「美好食堂」で、「焼肉ラーメン」(750円)と「ざる中華」(650円)で腹ごしらえ。
 2~3時間もあれば、ぐるりと見て回れるほどのちいさな集落に、海へ続く路地が迷路のように入り組む町並みは、歴史のある港町ならではの造りだ。肩を寄せ合うように並ぶ間口の狭い切妻の家並みの中には「船印入り船蔵」をはじめ、庄内第二の大地主だったという秋野家の屋敷「秋野邸」や珍しい洋風建築の尾形家別館「聴濤館(ちょうとうかん)」などの姿もある。懐かしい「共同利用の井戸」は、伺えば今も植木の水遣り等に使われているとのこと。地元で採れる“加茂石”で造られた家紋入りの「土蔵の通気孔」は、湿気の多い土地柄ならではの工夫だ。
 折しも訪れた日は、由緒ある「春日神社」の例祭“加茂まつり”(!)。町を練り歩く神輿やハッピ姿の人々の賑わいにつられ、私たちも、素朴な郷土菓子“きんつま焼き”(見た目はたこ焼き、中は餡子)を買い求め祭り気分を満喫(笑)。
 その喧騒から少し離れ、加茂の町並みを見渡す山の中腹にある「浄禅寺」のベンチで涼んでいると突然、寺のご住職に声をかけられた。「茨木のり子さんのお参りですか?」伺えば、寺は戦後を代表する女性詩人、茨木のり子氏の菩提寺だという。何の予備知識もなく伺った非礼を詫びると、せっかくですから、と墓前に案内してくださった。樹齢500年とも伝わるケヤキの大木が見守る墓所は、詩人の安住の地らしい海を見渡す見晴らしの一等地。雲ひとつない春の空に、朗々と響くご住職の読経を聞きながら連れと2人、静かに手を合わせる。
 ご厚意でそのまま本堂でお茶をいただきながらお話を伺えば、茨木氏のご主人の実家がここ、加茂とのこと。生前2度程、氏にお会いしたことがあるご住職のお話では、知的で美しい印象の方だったという。寺では朗読会など定期的にイベントも開催しており、全国の茨木ファンが集まるようだ。本堂内には氏の著書やゆかりの資料などを紹介するコーナーも常設されていた。

82いさごや池の花s.jpg83いさごや和洋室s.jpg84いさごや和洋室桧風呂s.jpg85いさごや大浴場s.jpg
88いさごや夕日s.jpg89いさごや夕日s.jpg94いさごや夕日s.jpg
95いさごや夕食s.jpg96いさごや夕食s.jpg97いさごや夕食s.jpg101いさごや朝s.jpg102いさごや大浴場s.jpg

詩情あふれる光と影の舞台。
海と夕陽の湯野浜劇場。

 いさごやへ到着したのは、日も傾いた夕暮れどき。中庭の池ではアナカリスの白い花がひと足早い季節を告げている。案内された部屋はヒノキ風呂の内湯も贅沢なベッドのある和洋室。初夏を思わせる陽射しの中、一日歩き回った体を抱え、まずは海を望む「吟水湯」でひと風呂。今日は絶好の“夕陽日和”になりそうだ。風呂から眺める景色も捨てがたいが、せっかくなら浜辺へも降りてみたい。深まる夕暮れの気配に、心はそわそわと窓の外へ走る(笑)。
 浜に降りてまもなく。やがてその瞬間はやってきた。かたちあるものを一篇の詩のようなシルエットに切り取り、茜から紫へと世界を染め上げる夕陽は、静かで壮大な音楽だ。見慣れた景色を一変させる光と影の演出の中、波越しに浮かぶ鳥海山が微笑むように佇んでいた。
 名画の余韻を抱え向かった夕食では、うるいに孟宗、庄内名物の“桜鱒”を使った「桜鱒幽庵焼」など、盛りの食材のお出迎え。料理人との会話を愉しみながら、七輪の炭火で目の前で炙り上げる「月山筍」の香ばしい匂いも食指をそそる。北前船によって京の都から伝わったという郷土料理「むき蕎麦」は愉しい歯応えで、素朴で涼やかな先付だった。
 眩しい翌朝。窓の外は、今日も濃密な空と海の蒼の世界。心躍る気持ちで浴衣の裾をはためかせ、のんびりと浜辺を散歩してみる。朝の光が射し込む湯船で手足を投げ出して湯に遊び、腹を空かせていただく朝食は、まさに天恵の美味だった(笑)。

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116渡曾本店12s.jpg117渡曾本店19s.jpg渡曾本店写楽・尾上松助の松本造酒之進s.jpg118渡曾本店10s.jpg119渡曾本店20s.jpg

庄内の自然と匠が醸す、
銘酒と在来漬物の妙技。

 湯野浜温泉から車で約20分。向かった大山地区は戦国時代、この一帯を支配した武藤氏の城下町だ。大山は幕末には天領となり羽州浜街道の宿場町として、また海の守護神を祀る名刹、善寳寺(ぜんぽうじ)(詳細はこちらのブログを参照)の門前として栄えた。良質な米と月山・朝日山系の山々がもたらす清水に恵まれたこの地では酒造業も発展。隆盛時には約40軒もの酒蔵が立ち並び、兵庫の“灘”、京都の“伏見”と並ぶ酒処として名を馳せたという。古い町家の姿も残る地区内には、今も4軒の酒蔵がある。
 そのひとつ、「渡會(わたらい)本店」の敷地内にある「出羽ノ雪酒造資料館」(大人1人 100円)へ。蔵の創業は元和年間(1615~1623)。館内には酒造りにまつわる道具類や古文書など、大山の歴史を紹介する貴重な資料が展示されている。地元の名士らしく、一角には元首相の大平正芳氏をはじめ、歴々の当主と親交のあった夏目漱石や正岡子規、藤沢周平といった、そうそうたる文人墨客ゆかりの品や、写楽や歌麿の浮世絵(本刷りだろうか)など見応えある美術品コレクションもある。
 解説によれば、酒造りの高い技術を誇った「渡會本店」は秋田をはじめ、東北の主要な酒蔵が学んだ名門だという。酒米の改良や精米歩合などの興味深いデータは、蔵が科学的な根拠に基づく酒造りの研究所であることをあらためて教えてくれる資料だった。
 敷地内には蔵で醸した銘酒を気軽に試飲できるコーナーもある。資料館を見学しなくても楽しめるが、ここを訪れたらぜひ、歴史ある大山の物語ごと味わってみることをおすすめしたい。

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111本長08s.jpg110本長13s.jpg109本長06s.jpg121酒と漬物s.jpg

 最後に向かった「漬物処 本長(ほんちょう)」は、そこから車で数分の場所にある、明治時代創業の老舗。ここでは、珍しい“漬物蔵”の見学が無料で楽しめる(要予約)。
 予定より少々早めの到着にも関わらず、快く迎えてくださった案内の方の後に続き、早速、店の裏手にある大きな漬物蔵へ。重い扉を開けたとたん、鼻の奥にぷん、と飛び込んでくる“酒粕”の匂い。入ってすぐの場所には、地中に半分以上埋設された直径2m程もある巨大な塩蔵樽の姿が。お話によれば、温度差の少ない地中は漬物の保存に最適なのだという。驚いたことに蔵で今なお使用している樽の中には、1798(寛政10)年製(!)のものもあるらしい。
 外内島(とのじま)きゅうり、民田(みんでん)ナス、黄金茗荷(みょうが)、藤沢かぶ。海と山に囲まれた鶴岡は、昔ながらの在来野菜の宝庫として知られ、店では創業当時からこれらの材料にこだわり、職人が昔ながらの手作業で伝統の味わいを守り続けている。おすすめはもちろん、大山の酒粕を使った“粕漬”。見学では下処理の塩漬けから本漬まで、何度も樽を変えては仕込まれる漬物づくりの工程について店の方が丁寧に説明してくれる。その手間ひまを知れば、漬物を味わう心持ちも変わる。
 見学の最後にある試食コーナーには、初めて目にする伝統野菜の漬物がズラリと並び、酒好きでなくてもテンションが上がること間違いなし!(笑)。樹齢100年を超す金山杉の通し柱が目を引く店内で、連れは土産選びに夢中のようだ(笑)。同郷の地で育まれた美味い酒と美味い“アテ”。今晩、旅の思い出を語るのに、まさにこれ以上の演出はないだろう(笑)。
 海に山に、伝統の手仕事に。庄内の“水”が育む土地の宝に目を向け、定点観光の距離感で丁寧に訪ね歩いた加茂・大山巡り。そこにあったのは、今なお連綿と歴史を紡ぐ人々のごくありふれた日常だ。そして、決してありふれていない奥深さだった。



【歴史情緒のまち、加茂・大山地区 詳細】

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↓加茂地区のパンフレットはこちら
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■鶴岡市加茂水族館
極小のエダアシクラゲや、彩り鮮やかなハナガサクラゲ、ミズクラゲなどの他、2008年に下村修氏のノーベル賞受賞で一躍有名になった緑色に光るオワンクラゲなど、クラゲの展示数(50種類以上)で世界一を誇る、県内唯一の水族館。50周年を迎えた2014年に「クラゲドリーム館」としてリニューアルオープン。ウミネコの餌付けショーやアシカショーは家族連れに人気。世界でも珍しくクラゲを素材にしたコラーゲンたっぷりの料理やアイスなども楽しめる。

住所/山形県鶴岡市今泉大久保657-1
TEL/0235-33-3036
営業時間/9:00~17:00(7/29~8/20は9:00~17:30)※最終入館は閉館30分前まで
入館料/一般(高校生以上)1,000円 小・中学生500円
定休日/無
駐車場/有
↓パンフレットはこちら
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01加茂水族館01.JPG11加茂水族館21.JPG13加茂水族館26.JPG16加茂水族館31.JPG

■荒埼燈台
加茂水族館のすぐ脇にある白亜円形の小型灯台。日本海や鳥海山を望むビューポイント。夕陽の絶景は特におすすめ。
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■美好食堂
加茂の海岸線沿い、加茂水産高校の目の前にある青い地区唯一の大衆食堂。中太の自家製麺による人気のラーメン(550円)をはじめ、ご飯類、そば・うどん類など豊富なメニューで人気。

住所/山形県鶴岡市今泉大久保653-3
TEL/0235-33-4173
営業時間/11:00~14:00
定休日/毎週水曜
駐車場/有
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■加茂港
鶴岡市街から北西に約10km、日本海に面した小湾。鎌倉時代から天然の良港として知られ、江戸期には酒田に向かう北前船が食糧や水の補給、暴風雨からの避難で寄港し発展。港で陸揚げされた荷物は大山や鶴岡城下まで、加茂街道を経て運ばれた。当時、町には10数軒の廻船問屋、また船を持たない付船問屋も10数軒、酒造業者も10軒程あり、出船入船による賑わいは明治まで続いた。港を囲む小高い山には、今も神社仏閣が数多く点在。時代の名残を感じさせる蔵や邸宅、民家、狭い路地などの風情が残され、〈庄内景観回廊〉として県の指定を受けている。現在は県立加茂水産高等学校や山形県水産試験場が立地し、県の海洋研究・海洋教育の拠点となっている。
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〈加茂地区の町並み〉
※駐車場は加茂レインボービーチ(海水浴シーズンは有料)、または加茂コミュニティセンターをご利用ください。
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・船印入りの船蔵
漁船の旗マークである“マル卜リ印”のある船蔵。漁具類の保管蔵として今も使われている。
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・秋野邸 
酒田の本間家に次ぐ庄内の大地主といわれた秋野家の邸宅。。間口の狭い家が多い加茂にあって、敷地を板塀で囲みゆったりとした屋敷構えを見せている。(建物内は見学不可)
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・尾形家 聴濤館(ちょうとうかん)
加茂には珍しい洋風建築物で、鶴岡市都市景観賞を受賞している。
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・土蔵の通気口
地元で採れた加茂石で造られた家紋入りの通気孔。加茂でも珍しいもの。
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・共同井戸
山が近い土地柄から、加茂には共同生活用水の井戸が点在。中には今でも使われているものも。
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・熊野神社
1187(文治3)年、出雲圀八束郡熊野村より御分霊を勧請。例祭は毎年8 月15日。高台にある境内は、加茂港と黒瓦の並ぶ町並みがの見晴らしスポットのひとつ。
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・石名坂邸 
かつての廻船問屋の館。正面の軒下に航海の安全を祈る祈祷札がいまも掲げられている。敷地は縦長で外見は簡素だが、内部は部材に漆を塗った豪華なつくり。登録有形文化財指定。
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・春日神社
創建年代不詳。社伝では清和天皇の御代の865(貞観7)年、大和国奈良春日神社より勧請し、春日大明神と称したと云われる。毎年5月18日に行われる加茂まつりはこの神社の大例祭。
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・蔵屋敷 
廻船業時代に米や海産物などの産品を貯蔵した蔵。
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・熊耳山  少林寺 
1623(元和9)年の創立。本寺は鶴岡市下川の善宝寺。達磨大師を本尊とし、達磨大師とゆかりがある中国の少林寺と同じ寺号。曹洞宗寺院としては異色の寺。境内は960坪あり、寺宝とされている山門は文化年間(1804~1818)の建造。大きな船柱や板をそのまま使用して造成されており、加茂港が栄えたころを偲ぶ文化資料となっている。
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・光明山  極楽寺
創建は建久年間(1190~1198)。寛政年間(1789~1800)に鶴岡市の善宝寺の第26世大雲和尚の時に曹洞宗に改宗し同寺の末寺となった。昭和初期に裏山から出土した宝筐(ほうきょう)印塔は県の有形文化財に指定されている。
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・西栄山  浄禅寺 
1474(文明6)年、浄土真宗第8世中興蓮如上人の弟子・寂蔵坊が越前吉崎(福井県)より聖徳太子尊像を与えられて加茂の浦に着き、高館山の麓の通称・東山に草庵を結び「寂蔵寺」と称した寺。1672(寛文12)年、本願寺の寂如法主より「浄禅寺」の寺号を賜る。詩人・茨木のり子の菩提寺。境内からは加茂の港や街並みの絶景が一望できる。
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〈茨木のり子〉
戦後の日本を代表する女性詩人にして童話作家、エッセイスト、脚本家。同人誌「櫂」の創刊者。時代に屈せず、真摯に生きる姿勢をうたいあげた叙情詩は、今も多くの女性から支持されている。主な詩集に「鎮魂歌」「自分の感受性くらい」「見えない配達夫」などがある。代表作「わたしが一番きれいだったとき」は、多数の国語教科書にも掲載(※茨木さんは15歳で日米開戦、19歳で終戦)。

■大山地区
戦国時代、武藤氏が大宝寺から居城を移し発展。酒造りに適した弱アルカリ性の朝日水系の伏流水と地元の米で醸される“大山酒”は、江戸時代、由良や酒田の港から北前船で上方へと送られ、灘や伏見に次ぐ酒処としての名声を築いた。現在、地区内には徒歩圏内に4つの蔵元がある。例年、新酒が出回る2月には、地区を挙げての恒例の酒蔵まつり〈酒蔵めぐり〉も開催され、この蔵にも銘酒を求める人々が長蛇の列をつくる。

■渡會(わたらい)本店 
大山地区に4つある酒蔵のひとつ。創業は元和元年(約380年前)。灘と並ぶ銘醸地、大山で月山・朝日山系の山々から流れ下る清冽な赤川の清浄水と、庄内平野の良質米での酒造りを行う名蔵元。代表銘柄は「出羽ノ雪(でわのゆき)」と「和田来(わたらい)」。フルーティーな甘みと香りに加えキレのよい飲みやすさが特徴の「和田来」は、「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」の最高金賞を2013年から3年連続で受賞。

・出羽ノ雪酒造資料館
渡會本店の敷地内にある資料館。酒造り方式、道具類、稲の道、世界各地の稲株、米づくりにまつわる資料など、酒蔵の町・大山の酒の歴史を示す古文書や酒造りの道具類などの貴重な資料を展示。交流のあった夏目漱石や正岡子規、高浜虚子、藤沢周平などの文人墨客ゆかりの品々や、蔵の主人が蒐集した美術コレクションも見応えがある。直売所では気軽に試飲もできる。

住所/山形県鶴岡市大山2-2-8
TEL/0235-33-3262
営業時間/8:45~16:30(日・祝祭日/8:30~16:30)
入館料/100円
定休日/1/1~1/3
駐車場/有
↓パンフレットはこちら
出羽の雪酒造資料館01.jpg出羽の雪酒造資料館02.jpg
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■漬物処  本長(ほんちょう)
1897(明治30)年、灘の銘酒「白鹿」の醸造元へ見習奉公に行った創業者の本間長右エ門が“粕漬”に出会い、帰郷後の19078(明治41)年、地元の酒粕を使い、うり、きゅうり、小茄子、みょうが、月山筍を粕漬にする漬物屋として創業。昔ながらの職人の手仕事にこだわり、大山の酒粕、庄内産の無農薬米の米糠、藤沢かぶや民田なすなど地元で採れた在来野菜を使用してつくられる漬物は大山の特産品として知られる。 事前予約により漬物蔵の見学ができる(要予約)。

住所/山形県鶴岡市大山一丁目7-7
TEL/0235-33-2023
営業時間/8:30~16:30
定休日/無
駐車場/有
↓パンフレットはこちら
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105本長01.JPG107本長04.JPG108本長14.JPG121酒と漬物.JPG