10月 舟運で繁栄した港町酒田、山居倉庫。

今なお堂々たる姿を誇り、酒田の舟運栄えし時代を語る倉庫群。
「庄内米」を「庄内米」たらしめた歴史遺産を訪う。

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202010月某日


 鶴岡と隣り合う酒田は、江戸時代に整備された西廻り航路の起点。その航路を往来する北前船の交易で「西の境、東の酒田」と謳われるほどに繁栄した港町だ。庄内の二大都市である鶴岡と酒田は、かたや武士の城下町、かたや商人の港町としてそれぞれ独自の文化や気質を育んできた。


 そのため両者は対比的に語られるのが常であるが、こういったライバル的な関係に起こりがちな対立などはなく、むしろ一対の両輪的に関わりながら互いに庄内の歴史を刻んできたともいえる。


 酒田にはもともと御領米の積み出し港としての歴史があった。最上川舟運によって流域の天領から米が集まり、天領や奥羽諸藩の米蔵も建てられていたが、西廻り航路の開発以降、この日本海ルートを走る北前船の寄港地としてさらに飛躍的な発達をとげることになる。

 北前船は単なる運送船ではなく、船主の裁量で各地の特産品などを売り買いしながら寄港地を巡っていた。交易による利益は莫大で、酒田の港には最上川舟運を通じて山形各地の名産品が集まるようになってゆく。

 酒田から送り出す物資の中でも最も重要なもののひとつが、やはり米であった。初代庄内藩主酒井忠勝公が稲作を奨励したこともあり、庄内は日本でも有数の米どころとなっていたが、その「庄内米」を上方へと売り込んだ。

 こんな歴史背景をふまえつつ、今回は酒田にある「山居倉庫」を訪れてみた。船着場のある川岸に建ち並ぶ、スケールの大きな米の保管倉庫群だ。「港町酒田のシンボル」あるいは「米どころ庄内のシンボル」とも言われる。酒田の見どころとしては外せないスポットのひとつだ。


米の保管性能と建築美が高度に結晶。
高橋兼吉の技術の真髄が凝縮された山居倉庫。

 「山居倉庫」は明治26(1893)年、「酒田米穀取引所」の付属倉庫として旧庄内藩主酒井家によって建設された。「山居倉庫」の呼び名の由来は、そこが船運に便利な最上川と新井田川の中州、通称「山居島」といわれた場所だったことによる。


 設計したのは、鶴岡の棟梁・高橋兼吉。前回訪れた致道博物館(詳しくはこちらの記事を参照)「旧鶴岡警察署庁舎」や「旧西田川郡役所」の設計者でもある。「山居倉庫」は高橋兼吉の建築の集大成ともいわれ、その持てる技術をすべて注ぎ込んで創ったという。

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 後年の増築により最大時は15棟が並んでいたが、現在は12棟が残され、このうち1号棟が資料館として、11・12号棟が観光物産館として利用されている。残り9棟は、なんと現役の農業倉庫として今現在も利用されているというから驚きだ。

倉庫1棟の大きさは間口7.5間(13.6m)、奥行16間(29.1m)、延床面積120坪(396㎡)。米の収容数は、最大時では15棟で約20万俵(12,000t)、現在は9棟で18万俵(10,800t)というから、少なく見積もっても1棟あたり800t(約13,300俵)は下らない。(最大15,000t/1棟とする説も。)まぁ、とにかく大きい。新井田川沿いに、白壁の蔵造りの大倉庫がずらりと三角屋根を連ねる様は壮観だ。

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 倉庫の裏側は黒板塀になっており、倉庫の背後に沿うようにケヤキの木が植えられている。本来の目的は海からの強い西風と夏の直射日光を遮り、倉庫の温度変化を少なくするためのものだが、樹齢150年以上と言われるケヤキの大木が一列に並び、およそ200余mも続こうかという見事な並木道の様相を呈している。

 赤や黄に色づき始めた葉が陽の光を受けて、倉庫とケヤキの間に敷かれた石畳や、倉庫の壁や屋根にこぼれ落ちる木漏れ日が美しい。(石畳は観光客が歩きやすいようにと後から敷かれたものらしいが)「これは誰が写真を撮ってもイヤでも絵になる!」とは連れの弁。

 ケヤキ並木のほぼ中間点には、倉庫を守護する「三居稲荷神社」が祀られている。倉庫の建設時に、施主である旧藩主酒井家の太郎稲荷と徳川家の禎祥稲荷の二柱を勤請し、もとからこの地を鎮守していた山居稲荷神社に合祀して「三居稲荷神社」と改名したとのこと。徳川家は酒井家の主家でもあり、最上川流域に20万石の天領を有していた。

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 「三居稲荷神社」の前には、5号棟と6号棟の間を通って倉庫の表と裏に通り抜けができる通路があり、倉庫の側面から屋根が二重構造になっていることがよく観察できる。この二重屋根は風通しをよくして、庫内の熱を放散すると同時に屋根からの伝導熱を防ぐ工夫である。

 他にも、土間ににがりを混ぜ込み内部の湿気を軽減する、外壁には黒く焼いた杉板を用い耐久性を高める、接合部には釘を使わず木製のくさびを使用するなど、米の劣化を防ぎ最適に保管するための知恵と技が随所に駆使されている。倉庫裏のケヤキ並木もしかりだ。

 さらには明治27(1894)年に発生した庄内大地震にも耐えて(もとの地盤が軟弱な中州だったにもかかわらず!)倒壊を免れたが、これも松杭を利用した基礎補強技術が功を奏したものだという。完璧なまでの技術の確かさには驚嘆するばかりだ。それでいて全体の美しさは堂々たる調和を保っている。設計者の高橋兼吉にはもはや尊敬の念しかない。

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 川辺の船着場の横に「東宮殿下行啓記念館」の名を冠した、擬洋風建築とおぼしき小さな建物があった。ツタを纏った風情がいい感じなのだが、情報が拾えず詳細は不明だ。新井田川に架けられた「山居橋」は、かつての木造の橋を復元した太鼓橋。構造は鉄筋だが、ヒバ材を用いるなどして往時の雰囲気を再現している。

 船着場では小鵜飼舟という小回りのきく船が活躍した。復元された小鵜飼船が川辺の一角に展示されている。舟幅は2m足らずだが一度に2〜3tもの米を運べたという。

 ちなみに現在JA全農山形の倉庫として使われている2〜10号棟は、外観のみ見学可能だ。実働している倉庫内は全て立ち入り禁止となっており内部見学はできないので注意されたし。


米俵の重さをリアルに体感。
山居倉庫と庄内米のアレコレを見て触れて学ぶ。

 「山居橋」のたもとのすぐそばが1号棟。前述の通り、1号棟は「庄内米歴史資料館」として利用され、「山居倉庫」や庄内における稲作の歴史や、米の流通に関する資料などが展示されている。例えば、「山居倉庫のジオラマ」では、小鵜飼舟が船着場に発着する様子や、米を上げ下ろしする際に風雨にあたらぬよう、船着場から倉庫まで屋根付きの通路があった様子が再現されている。

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 また、昔の農家の生活風景が等身大の人形やパネルで展示されていたり、庄内で栽培されてきたブランド米の変遷が稲の実物で確認できたり、西廻り航路を走った千石船の模型があったり、万人受けでは無いかもしれないが、なかなかマニアックだ。NHKの連続テレビ小説「おしん」で、主人公の少女おしんが酒田の米問屋・加賀屋で奉公している一場面を見せる人形の展示もあった。

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 びっくりするのが「山居倉庫」で働いていた「女丁持」と呼ばれる女性達。倉庫内での米の運搬は主に女性が担っており、1俵60kgもある米俵を軽々と担ぎながら、舟から倉庫に米を運んだり積み上げたりしていた。身元が確かな女性しか採用されず、報酬も相当に高かったという。一人でなんと5俵(300kg!)も担いだ猛者もいたとかで、写真と人形が展示されている。

 もっとも、5俵を担いで二人で写っている写真の方は、実は当時の観光用のデモンストレーションだったらしい。5俵のうち2俵の中身は籾が入っており、実質は米3俵(それでも180kg!)だったというのが種明かし。とはいえ、一度に2〜3俵担ぐことは茶飯事(!!)で、力試しとして一瞬ではあるが5俵を担いだ女性がいたことも事実のようだ。

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 「俵をかついでみよう!」のコーナーもあり、30kgと60kgの俵状のおもりが用意されている。連れが30kgの方に挑戦したが全く太刀打ちできなかった(笑)。このコーナーの展示を見て体験するだけでも入場料を払った価値があったと思う次第。秋の収穫期には小鵜飼舟で次々に米が船着場に届けられ、米俵をかつぎながらキビキビと働く女性達の姿が風物詩でもあったとか。

 「山居倉庫」における品質管理は厳格で、入庫米はすべて厳しくチェックされて等級がつけられた。保管中の管理は厳重を極め、品種の改良にも努めた。そうしたことにより「山居倉庫」から出荷する米は「日本一の品質」と認められるようになった。旧庄内藩以来の米券法で管理し発行された、山居倉庫の「米券」は、いつでも換金できるほどの信用と権威があったといわれる。


酒田の歴史も文化も匠の技もお土産も一堂に。
改装された2つの倉庫に詰まった、今につながる先人の思い。

 再びケヤキ並木を通って、11・12号棟に向かう。この2棟は「酒田市観光物産館・夢の倶楽」として改装され営業している。11号棟には酒田の歴史や文化を紹介するミュージアム「華の館」、12号棟には観光案内所や食事処があり、「幸の館」では酒田のお土産品が揃う。2棟の間にはウッドデッキのオープンテラスが設けられており、大ケヤキの木陰が心地よい。

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 ミュージアム「華の館」は入場無料。常設展の他、年6~7回入れ替えで企画展を開催し、酒田ゆかりの作家の作品や地元の伝統工芸品、旧家に伝わる雛人形などを紹介しているとか。また、酒田の工芸品や民芸品がギャラリー仕様で多数並べられ、同時販売されている。

 この日の企画展は「浪漫をたどる紅花展」。紅花といえば山形のシンボル的な特産品であり山形の県花でもある。そして米と並んで北前船の重要な物資の一つであった。ここでは紅花の歴史、紅花の加工工程などとともに紅花を運んだ北前船のルートが紹介されていた。

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 山形県に紅花が伝わったのは室町時代末期といわれるが、山形が紅花の一大産地となったのは江戸中期になってからのことだ。そこには最上川舟運、さらには北前船による上方との交易が関係するという。紅花商人たちの活躍が産地拡大に繋がったとする説だ。鮮やかに染められた紅花染の品物も並んでいたが、この色は現代人をも魅了する。連れも目を輝やかせていた。

 常設展示では、酒田市有形文化財の指定を受けた「酒田山王祭祭礼用亀笠鉾」がある。北前船で財を成した豪商の中でも日本一の地主と名を馳せた酒田の本間家。その三代目当主光丘が、京都の祇園祭山鉾巡行に習って山王祭を盛り上げ、酒田の町を活性化させようと京都の人形師に作らせた山車だ。北前船で京から運んだという。

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 また「おしん人形ギャラリー」も常設展示されている。酒田はNHKの連続テレビ小説「おしん」のゆかりの地で、山居倉庫もロケに使われている。先ほどの「庄内米歴史資料館」でも人形による「おしん」の一場面が展示されていたが、こちらの人形はまた違ったテイストで作家性が強い。

 人形作家大滝博子さんの手によるもので、最上川での家族の別れ他、様々な場面が表現されている。ちなみにおしんの奉公先の米問屋・加賀屋は、酒田を代表する廻船問屋だった「旧鐙屋」をイメージしたものだといわれる。鐙屋の繁栄ぶりは井原西鶴の「日本永代蔵」にも紹介されている。

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 展示販売されている工芸品や民芸品は多種多様。庄内にはこんなにも手技があったのかと驚く。特に伝統工芸の匠の技には思わず見とれてしまう。中でも飛鳥時代から続くという「組子細工」の熟練された繊細さと緻密さ、美しさにはため息が出るばかり。(お値段もため息ものだが。)

 他にも、美と機能を兼ね持ち北前船の船頭も使っていたという「酒田船箪笥」、伝統的な木工の技術を活かしたデザイン家具、藍染や刺子、ほっこりした温もりを感じる民芸品などなど、種類も価格もバラエティに富んでいて見ているだけでも楽しい。

 「幸の館」で酒田のお土産品を物色する。品揃えが多すぎてどこから見ればいいものやら迷いそうだが、さすがの連れは嬉々としている。ついつい地酒に目がいくが、結局ここでも目移りする。


酒田ラーメンの中枢たる「月系」の雄。
口の中で羽衣のようにふわりととろける極上の薄皮ワンタン。

 昼時は、せっかくなので酒田ラーメンを食べましょうということになった。酒田のラーメンの特徴は「魚介系の出汁でとったすっきり醤油味スープに自家製麺」とざっくりしているが、大きくは3つの系統があるらしい。その中枢を担うのが店名のどこかに「月」の字が入る「月系」と呼ばれる一連で、実際、酒田の街中に車を走らせると「○月」「○○月」「○○○月」というラーメン店の看板がやたらと目に入る。

 また、同じ系統ではあってもそれぞれ独自の味を追求しており、店ごとに違う個性やこだわりがあるという。これもまた酒田のラーメンの特徴のひとつなのだとか。今回選んだ「ワンタンメンの満月 酒田本店」は「月系ラーメン」の中心的な存在で、酒田の極薄皮ワンタンメンの草分けと言われる店だ。

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 というわけでオーダーはもちろん「ワンタンメン(790円)」。こちらは創業から50年以上の王道しょうゆ味。連れは絶賛売り出し中の「塩ワンタンメン(830円)」。まずはスープを。酒田ならではのトビウオ(アゴ)の焼き干しの他、数種の魚介系を使った出汁。見た目通りのあっさりすっきりだが旨味がじんわり。粉からこだわった自家製の中細ツルぷり麺との相性もばっちり。

 そして看板の自家製ワンタン。スープの中に極薄の衣をまとったワンタンがふわりと浮かぶ。さて一口。ん?この口当たりのなめらかさはなんだろうか。ホワッっというかツルッというかスルッというか…。皮は透けるように薄く、余韻を残しながらも口の中から儚く消えてゆく。連れも「こんな食感のワンタンは初めて。」とご満悦だ。塩スープの方もトビウオ(アゴ)を使用したブレンド出汁。淡い黄金色のスープに揺らめくワンタンは見た目にも美しい。


豊穣の庄内の秋に舌鼓。庄内沖につるべ落としに沈む夕日。
揺蕩う湯に身を遊ばせ、秋の夜長を贅沢に愉しむ。

 酒田市内からいさごやまでは車で約25分。国道112号線に出れば宿の前まで直通だ。駐車場に車を停めて砂浜に出てみる。雲ひとつない高い空に真っ青な水平線が広がり、波はおだやかに打ち寄せる。来た道の方向を振り返れば鳥海山のシルエットが見える。

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 旅の荷をといて客室でひとごこちつく。秋の日はつるべ落としだ。八つ時をまわれば日の光も夕方の気配を帯びてくる。しばしまったりしたのち、チェックイン時に予約を入れておいた貸切のお風呂「ハイプライベートスパ 漣-REN」へ。今回はここで夕日を堪能する算段だ。事前に日の入り時刻を確認して、見頃の時間は計算済みである。

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 この日は雲ひとつない晴天。太陽が西の空に傾きはじめると空の色もグラデーションを描きながら徐々に変化を見せる。その色を映す湯船に身を沈め、景色を独り占めする贅沢。空は茜色の余韻を残しながらやがて薄暮へ。気分だけは詩人だが、うまい言葉が見つからない。

*ハイプライベートスパ『漣-REN』
 スタンダードプラン 3,000円(税別)
 プレミアムプラン    5,000円(税別)(バスローブ・シャンパン付)
 各45分 チェックイン後順次予約受付

 夕食会場は「料亭 白砂」の個室。今宵の膳のお品書きには「神無月 秋深まりゆく」のお題が。前菜には月見団子とすすきがあしらわれており、お月見の趣向となっている。満月に見立てた器を開ければ、秋食材の白和え。栗の黄色と紫のもって菊の彩りが美しい。庄内三元豚のフィレ肉はおしゃれなピンチョス仕立て。先付には庄内の郷土料理・むきそば。食前酒の巨峰酒は色も鮮やかでフルーティー。

 食中酒として今回選んだのは鶴岡の地ワイン。月山ワイン山ぶどう研究所「豊穣神話」の白だ。庄内産のぶどうを100%使用。セイベル種を主体として仕上げたすっきり爽やかな甘口。いさごやの上品な味付けの和食ともよく合う。お造りはもちろん庄内浜の旬の地魚。サワラ、イシナギ、ソイ、ボタンエビと、他の土地ではなかなか一同に揃わない贅沢な盛り合わせだ。

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 焼物はおばこサワラの杉板焼。脂がのり香ばしく焼きあがったサワラを秋の香りとともにいただく。春のイメージがあるサワラだが、庄内浜では秋が旬だ。厳選したサワラに独自の締め処理を施した「庄内おばこサワラ」は、庄内が誇るブランド魚。熟成とともに旨味も増すという。杉板焼に添えられたすだちも庄内産。近年収穫がはじまったばかりの貴重な北限のすだちだとか。

 目の前で焼き上げられ、バターとレモンでいただくアワビ、続いて綺麗なさしが入った山形牛のしゃぶしゃぶ、と、口福がとまらない。ご飯は庄内産「はえぬき」の新米。「いい香り。ご飯だけでも美味しい。」と、連れがのたまう。これもまたこの時期ならではのご馳走である。

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 汁物は庄内と内陸の芋煮の食べ比べ。芋煮は山形県の秋の風物詩だが、味付けは、内陸は牛肉を使った醤油仕立て、庄内は豚肉を使った味噌仕立てと全く異なり、時には内陸派と庄内派の熱い論議にもなると聞く。第三者の結論としては美味しさはどちらも甲乙行け難い。

 締めのデザートは鳥海高原ヨーグルトシャインマスカットのせ。フルーツと一緒にのっているのは、洋酒の風味が効いたゼリーだ。なるほど。こういった小技を効かせることでぐっと大人仕様の味になるのだな。どうもごちそうさま。最後まで大満足でした!

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 客室に戻る前にラウンジへ。間接照明が灯るナイトラウンジは、秋の夜長のひとときを静かに過ごすのにぴったりの大人の空間だ。お酒のオーダーはウイスキーのみだが、日本を含めた5大ウイスキー産地の各種銘柄が取り揃えられている。じっくり味わいながら飲み比べるのも一興だろう。

*ナイトラウンジ クラブ『華水』
 営業時間 20:30〜23:00
 ウィウキー 1ショット(45ml) 1,000円(税別)
スコットランド/アイルランド/アメリカ/カナダ/日本の銘柄各種

 秋の夜長はまだまだ続く。再度予約を入れておいた貸切露天風呂に向かう。シャンパングラスを傾けながら(まだ飲むのか。笑)、秋の潮風とともにプライベートなミッドナイトスパを楽しむ。リビングスペースに置かれた音楽プレイヤーは使用自由。好きな音源を持ち込むこともできる。

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*ハイプライベートスパ『漣-REN』
 スタンダードプラン 3,000円(税別)
 プレミアムプラン    5,000円(税別)(バスローブ・シャンパン付)
 各45分 チェックイン後順次予約受付

 一夜明けて本日も快晴。客室の眼下の砂浜に海岸線沿いに立ち並ぶ宿のシルエットが伸びる。波はおだやかで優しく浜に打ち寄せる。その波打ち際、早朝の浜釣りを楽しむ人の姿が見える。波間に遊ぶカモメの姿も。朝食の前に、もうひと風呂浴びるとしよう。

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 大浴場の庭園風呂「月水湯」と展望風呂「吟水湯」は男女日替わり。午前4:00になるとさらに男女が入れ替わるので、一泊すればどちらのお湯も楽しむことができる。オーシャンビューの「吟水湯」で夕日を見るか朝の海を見るかはその日次第だが、この日の「吟水湯」での朝風呂はご婦人の特権となった。殿方は「月水湯」へ。海は見えないが包まれるような檜の温もりに落ち着く。

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*湯野浜温泉泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉
 適応症:冷え性 末梢循環障害 きりきず 皮膚乾燥症 ストレスによる諸症状 など 

 朝食会場の「料亭白砂」は、朝は仕切りがオープンになり、海を見ながら食事ができる。献立は「神無月の朝」。「そうそう、これこれ」という定番の安心感の中にも、ちゃんと季節感がおりこまれているのが「いさごやの朝ごはん」だ。本日の焼物は「鮭焼漬」。ふっくら焼かれた秋鮭にかえしの風味が程よく浸みて、口の中でほろほろほどける。旨いの一言。

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 卓上で温める「なめこ味噌汁」も秋の味覚。庄内三元豚ロースとと生野菜のサラダを食べ終えると、器の中に「福」の文字が。この器は北大路魯山人の“うつし”だが、客人の幸福を願う亭主の心づくしでもあろう。こんなさらりとしたもてなしも、この宿らしい。

 デザートには宝石のような極大粒のぶどう。どちらも初めて見るほど大きい。赤い粒は「ゴルビー」という希少品種。これが予想を超えた甘さで美味い。グリーンの粒は「雄宝」。こちらも希少種で、皮がやわらかくすっきりと爽やかな甘さ。見た目も味もインパクト大の秋の恵みだ。

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 チェックアウト後、せっかく気持ちのいい天気だからと宿の前の砂浜に出てみる。他にも人影がちらほら。熟年のご夫婦が仲睦じく海辺を散歩されている。その微笑ましい様子にほっこり。連れも「いくつになっても仲がいいのは素敵なことよね。」とにっこり。

 しばし波と戯れ、ふと目をあげれば、今日も遠くに鳥海山が見える。そういえば、昨日酒田の道路から見えた鳥海山はもっと大きかったっけ。ちゃんと酒田を見聞したのは初めてだったが、鶴岡の空気感とはまた違った魅力を感じた。ぜひまた訪れたい。「庄内あるく」と銘打つからには、もっといろいろまだ見ぬ場所を幅広く探訪せねば、との思いをあらたにしながら帰路に着いた。


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